米大統領選後、よく話題になることの一つとして、アメリカ社会で、トランプ氏自身の扱いや、議員なども含めたトランプ支持者の扱いが根本的に変わってきたということがある。世論や政治的文化が根底から変化し始めており、「世論のパラダイム・シフト」とでも言うべき現象が起きているように感じられる。
最も顕著な例として、前政権時にはトランプ氏と対立していたナショナル・フットボール・リーグ(NFL)の選手をはじめ、あらゆるスポーツ選手たちが、"トランプダンス"を踊り始めていることが挙げられる。トランプダンスとは、トランプ氏が選挙中に披露した、左右の拳を交互に突き出したり引いたりするダンスのことだ。
スポーツ選手のトランプダンスを筆頭に、アメリカ文化の中で、トランプ氏が「ノーマライズ」(Normalize)された(スタンダードになった)とも言われている。
トランプダンスを踊るNFLの選手たち(画像はトランプ支持の米下院議員バイロン・ドナルズ氏のXより)。
トランプ氏がスタンダードになった別の事例として、トランプ氏の政権移行の進め方について、アメリカ人の約6割が肯定的に捉えているという世論調査結果を、リベラルメディアのCBSニュース(11月24日付)が報道したことも挙げられる。
トランプ氏の政権移行の進め方について、肯定的な人は59%なのに対し、否定的な人は41%(画像はCBSニュースのホームページより)。
CBSニュースは、「ドナルド・トランプ次期大統領の政権は、国民からおおむね好意的に受け取られてスタートした。アメリカ人の大多数は、トランプ氏の勝利に喜んでいるか、少なくとも満足しており、大統領としてのトランプ氏の行動に興奮しているか、楽観的だ」と評している。また、「閣僚ポストの人選、特に国務長官に指名されたマルコ・ルビオ上院議員についても、全体的に好意的な反応を得ている」と指摘している。
トランプ氏の支持率は大統領選後、急上昇
また、世論調査を行う代表的機関の一つであるマサチューセッツ州のエマーソン大学は、大統領選直前に、ハリス氏とトランプ氏の支持率が拮抗しているという調査結果を発表した。これに対し、最も著名な世論調査の専門家であるネイト・シルバー氏は、「無責任な世論調査会社が、ハリス氏とトランプ氏の支持率の差を毎回1~2ポイント以内に抑えるために、過去の結果を利用して現在の結果に影響を及ぼす、という行動を取っている」と強く批判し、その筆頭格としてエマーソン大学を挙げていた(11月1日付ニューヨーク・ポスト)。
シルバー氏は「何十回もの調査で800人を対象にサンプル調査をした場合、すべての数字が正確に1ポイントの差でリードするということはあり得ない」と述べていた。
そのエマーソン大学は、11月26日、「トランプ氏の支持率が急上昇している」ことを率先して発表した。エマーソン大学によると、トランプ氏の好感度は54%で、選挙前の48%から6ポイント上昇したという。
エマーソン大学世論調査事務局長のキンボール氏は、「トランプ氏に最も好意的な年齢層は40~59歳の有権者で、60%が好意的なのに対し、70歳以上では48%となっている。特に若年層の好感度が上昇しており、30歳未満の55%が好意的な意見を示している」と述べた。