《ニュース》

複数の米リベラルメディアがこのほど、「トランプ氏がヒトラーについて肯定的な発言をしていた」とする元高官の証言などを報じました。しかし、その報道の中身について、反論の声が相次いでいます。

《詳細》

今回の報道は、トランプ前政権で大統領首席補佐官を務めたジョン・ケリー氏の証言にもとづくものです。ケリー氏はトランプ氏在任中の2018年末に退任しています。

ケリー氏は米ニューヨーク・タイムズ紙の取材に対し、ファシストの定義として、「極右の権威主義者、独裁的指導者に特徴づけられた運動、軍国主義、反対派への強制的抑圧」などを列挙。自身の経験上、トランプ氏はこうした定義に当てはまると述べました。また、「トランプ氏が『ヒトラーも良いことをした』と何度も言っていた」と証言しています。

また、米アトランティック誌の取材に対しては、「ヒトラーは経済を立て直した」「ヒトラーが持っていたような(忠実な)将軍が必要だ」など、トランプ氏がヒトラーのリーダーシップのさまざまな側面を称賛していたと述べました。

アトランティック誌はケリー氏の証言のほかにも、テキサス州のメキシコ人女性兵で同僚に殺害されたヴァネッサ・ギーエン氏について、トランプ氏が「くそったれのメキシコ人を埋葬するのに6万ドルもかかるわけない!」と罵倒し、葬儀費用の支払いを拒否したなどと報じています。

報道を受けて、民主党のカマラ・ハリス副大統領は、「600万人のユダヤ人と数十万人の米国人の死の責任を負うアドルフ・ヒトラーを引き合いに出すのは深く憂慮すべきで、非常に危険だ」と記者団に語りました。トランプ陣営はケリー氏の主張は「完全な虚偽」と否定しています。

一方、これらの報道をめぐっては、否定や疑問の声が相次いでいます。

トランプ氏の「ヒトラー発言」について、ケリー氏の部下だったメルセデス・シュラップ氏はXで、「職務に失敗したスタッフによる個人的な復讐」と断じました。マイク・ペンス元副大統領の首席補佐官を務めたニック・エアーズ氏が、ケリー氏の主張は「明らかに誤り」だと指摘したほか、反トランプとして知られるエスパー元国防長官も、トランプ氏がファシストではないとは言い難いとしながらも、「ケリー氏の主張を裏付けることはできない」と述べています。

メキシコ人州兵の葬儀に関する発言についても、州兵の姉であるマイラ氏がアトランティック誌の報道に対し、「妹の死を政治的に利用するのは理解できない」「(妹を)傷つけ、無礼な行為」とし、「トランプ氏は私たち家族と妹に敬意を払っていた」と反論しています(マイラ氏はトランプ氏に投票)。

トランプ氏をヒトラーなどの独裁者と結びつけるかのような報道はこれまで何度もされており、今回もその一つです。ただそのほとんどは、切り取り等による印象操作か、単なる虚偽であることが多く、安易に鵜呑みにすべきではありません。

《どう見るか》