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おいしい慶希(けいき)で
「天御祖神」の御名を伝える

感動して泣きながら電話してくる人も

慶希
各種の慶希は、贈り物や手土産として喜ばれている(写真は「みおや」提供)。

「天御祖神──日本最古の神へのロマンに『和』の心を求めて」

飯田橋や東京駅丸ビルなど都内に4店舗を構える蜜芋パウンドケーキ専門店「慶希処みおや」のパンフレットには、そんな一文が添えられている。

「天御祖神」とは、『古事記』『日本書紀』から消されたが、それらに先立つ古代文献『ホツマツタヱ』に記された日本の根本神。近年、日本神道、武士道の源流であったことに注目が集まる中、その御名を多くの人に知ってもらいたいと、MOCALグループ(紺乃一郎・代表取締役会長)が「みおや」を立ち上げた。

「正しい歴史、真実の歴史を伝えていくのは大事なことだと思います。慶希を通じて、『天御祖神って、日本神道の最古の神様なんだって』と知ってくれる方が増えたらうれしいです」(紺乃会長)


「武士道精神」を感じさせる慶希

天御祖神の教えは、お辞儀や合掌などの礼儀作法、大和の心、調和、善悪の観念など多岐に渡る。「みおや」では、カタカナの「ケーキ」ではなく、慶び、希みを広げるという意味を込めて「慶希」と名付け、「和の精神」や「武士道精神」を表現している。

例えば、体に負担のかかるトランスファット(脂肪酸)、ベーキングパウダー(膨張剤)、マーガリン、白砂糖は使わず、ほぼ無添加。裏表のない真っ直ぐな姿勢を感じさせる。

また、天御祖神は文字や稲作、イモ類などを地上にもたらしたが、慶希の生地は「幻の蜜芋」と呼ばれる種子島産の安納芋をふんだんに使い、石蔵で60日貯蔵して熟成させ、糖度を35度まで上げる。なお、イチゴの平均は10度、ブドウは20度程度と言われる。


製造中は私語禁止
刀鍛冶のようなパティシエたち

こだわりは製法にも及ぶ。

通常のパウンドケーキは金属製の型で焼き上げるが、慶希は糖度の高い蜜芋の蜜がぷつぷつと噴き出して火が通りにくい。そこで、特製の木箱を使って低温でじっくり焼き上げることで、上品でしっとりとした味わいに仕上がる。

製造部門部長でパティシエの八尋菜月さんはこう語る。

「素晴らしい素ばかりですが、生地を作って、木箱に入れ、焼き上げるまでに、状態がどんどん変わっていくのでスピードが求められます。

でも特に大事にしているのは『作り手の心境』です。慶希を通して、お客様に喜んで、感動して、元気になって、幸せになっていただきたい。真心を込められているか、善い思いで向き合っているか、どれだけ美しく仕上げられるか。そうした『真・善・美』の部分が付加価値になっていると信じています」

真剣勝負ゆえに製造中は「私語禁止」。紺乃会長は「華道や柔道、合気道などのように、パティシエたちは菓子製造を生き方としての『道』にまで高めようという思いに見えます。刀鍛冶のようです」と語る。

おいしい慶希で「天御祖神」の御名を伝える_03
生地は一つひとつ丁寧に木箱に収められていく(写真は「みおや」提供)。

「この世的な論理から外れた生地の仕上がり」

その思いは味に表れる。

「最近、製菓学校を出た人が新しく仲間に入り、そこで習った"常識的"な理屈で同じ材料で作ってもらいましたが、味が落ち、まったく違う味になりました」(紺乃会長)

「弊店の慶希は、この世的な論理からは外れた生地の仕上がりになっているらしいのです」(八尋さん)

感動して電話をかけてくるお客さんも多い。

「泣きながら電話をくださった女性がいました。『食べ物を食べて泣いたのは初めて。家族みんなで「本当においしいね、おいしいね」って食べました。その理由が分からなかったけど、パンフレットを読んで、こんなにこだわって作っていただいているのかということが分かって、さらに感動しました』って」(八尋さん)

天御祖神が日本にもたらした「精神的な高み」は、その後世界に広がり、各地で文明の基となっていった。「みおや」の慶希に込められた思いもまた、舌と心を通じて多くの人々に幸せを広げている。

おいしい慶希で「天御祖神」の御名を伝える_01
天御祖神にちなみ、慶希の箱には「富士山」や「桜」、手提げ袋には「秀真文字」があしらわれている。