平安時代初期に活躍した弘法大師・空海(774~835年)の魂は、その後、19世紀後半のスイスに生まれ、精神科医・心理学者のカール・グスタフ・ユング(1875~1961年)として活躍した(「ユングの過去世 心の奥に広がる「光」を求めて - 新 過去世物語 人は生まれ変わる」)。
中国の僧・恵果和尚から法灯を譲られた空海だが、この二人の不思議な縁については、「新・過去世物語 アナザーストーリー 真言密教の法灯を受け継いだ仏教僧・空海の歩み 中国の僧・恵果和尚は空海が訪れることを知っていた」で紹介した。
今回は、ユングと空海の神秘的な体験について見ていきたい。
ユングの「宇宙即我」の神秘体験は、立花隆氏さえも否定できなかった
若き日のユングは心の中を見つめ、秀才として成長する自分と、広大無辺な夢想の世界に生きる「もう一人の自分」がいることに気づいていた。
その"両者"の折り合いをつけられずに悩んでいたユングは、精神科医となり、夢や「虫の知らせ」などの不可知の現象を手がかりにして、心の奥にある広大無辺な「潜在意識」の解明に挑んでいくことになる。
興味深いのは、その果てに、ユングは晩年、空海の「宇宙即我」(大川隆法『黄金の法』幸福の科学出版刊 参照)の神秘体験と似た経験をしていることだ。
ユングは1944年に心筋梗塞を患った後に、足を骨折した時、「宇宙の高み」から「青い光の輝くなかに地球の浮かんでいる」姿を見たと語っている(『ユング自伝2』みすず書房 ※以下、ユングの引用は同じ出典)。
1961年、人類初の有人宇宙旅行に成功したソ連の軍人・ガガーリンは「地球は青かった」と語っているが、ユングがその体験をしたのは1944年。自伝を執筆している時代は1950年代である。つまりこの頃、人類はまだ宇宙から地球を映した画像を見ていない。当時の人は地球が青いことを知らなかったのだ。
臨死体験を"脳内現象"と解釈し、「心は脳にある」と主張するジャーナリスト・立花隆氏でさえも、この神秘体験を描いたユングの記述の真実性を否定することはできなかった。
「それを読んで私は驚いた。それが客観的な宇宙から見た地球像とよく合っていたからである」「しかもユングは、ガガーリンが見た位置(181~327キロメートル)よりはるかに高いところから見た地球の姿を正しく描写している」(立花隆著『臨死体験 上』文春文庫)
「どうして生れてきたのか、そして生命はどこへ流れ去って行くのか会得できるであろう」
その後、ユングは、自分の体験を現実的に検証したようだ。自伝では、どれぐらいの高度から見たのかを推測している。