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戸籍上の性別を変更するために生殖能力をなくす手術を受ける必要があるとする憲法の規定について、静岡家庭裁判所浜松支部が、「憲法違反で無効である」との判断を示し、手術を受けていなくとも戸籍上の性別を変更することを認めました。
《詳細》
2004年に施行された「性同一性障害特例法」では、「女性から男性に性別変更した人が出産する」といったケースが起きれば社会が混乱するなどとして、性別を変更する際に手術要件が定められました。
今回の申し立ては、ホルモン治療などを受けて男性として生活するが、性別適合手術は受けておらず、戸籍上は女性である申立人が行いました。性別変更の条件に生殖腺をなくす手術を行うことを規定している法律は、手術を事実上強制しており、人権を侵害し、違憲であるとして、手術なしでの性別変更を認めるよう求めたものです。
静岡家裁は申し立ての審議にあたり、最高裁で2019年に行われた別の審判で、性別変更の際の手術要件が違憲とは言えないとした上で、この判断が「性自認に従った性別の取り扱いや家族制度の理解に関する社会的状況の変化に応じて変わり得るもの」と判示されたことに基づいて検討を行ったとしています。
また、現在の医学では、性同一性障害の治療において性別適合手術を行うことは必須ではないことを挙げ、医学的に不要な手術を強制することの問題を指摘。「安易に性同一性障害の診断がされていることをうかがわせる証拠もない」としています。そして、世界保健機構(WHO)が2014年、性別変更に際して望まない不妊手術に反対する声明を出していることにも言及しています。
また、2004年以降、性別を変更した人は1万人を超えていて、性別変更の制度は社会に定着したほか、「LGBT理解増進法」が成立・施行されるなど、国や地方自治体の施策としても、国民の理解を増進することが求められることに至っているなど、状況が変化していることを挙げています。
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