東日本大震災の復興プランを策定する政府の復興構想会議(五百旗頭真議長)は29日、これまで出た意見をまとめた中間報告を公表した。まだ意見の集約前のものなので、統一感がなく矛盾した意見が並んでいるのは仕方がないとしても、一部気になる内容が含まれている。

まず「復興構想7原則」の「原則7」で、「今を生きる私たち全てがこの大災害を自らのことと受け止め、国民全体の連帯と分かち合いによって復興を推進する」と書かれていること。気になるのは「分かち合い」という部分で、うがった見方をすれば、「被災地を救うための復興対策費を国民全体で負担しましょう」という増税予告に見えるからだ(実際増税プランも盛り込まれている)。

なお、増税論者として知られる神野直彦東大名誉教授(政府税調専門家委員会委員長)が好んで使う言葉が、「悲しみの分かち合い」だ。

次に「現代文明の限界(成長神話と安全神話の終焉)」「科学技術への過度の依存への反省が求められる」といった後ろ向きの言葉が盛り込まれている点。成長・安全・科学技術の発展を否定するなら、今回の震災を機に文明を退歩させるしかなく、そもそもの「復興」という理念にそぐわない。復興を構想する会議としては自己矛盾している意見が盛り込まれていることになる。

さらに「被災地自らが復興プランを策定することが求められる」と言っている点。被災地の意見を聴いて復興プランを考えることは構わないが、被災地で予算を決められない以上、グランドデザインは国家レベルでの発想が必要となる。被災地でプランを策定するなら、即刻復興構想会議を解散し、地元の人たちだけで構想会議を開く必要がある。これも自己矛盾した考えであると当時に、政府の機関としては無責任だと言える。

また、「新しい公共」という概念を力強く打ち出している点も気になる。

新しい公共について、政治学者の嶋田陽一氏は、市町村などの地方自治体の行政を、共産党系のNPOが実質的に支配しようとするものだと訴えている(リバティ本誌3月号~6月号参照)。なぜ、このような考え方が震災復興に紛れ込んできているのか不思議だ。

【参考記事】 http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=1271

そのほか、増税についても触れており、全体的に社会主義的な色彩がにじんだ内容となっている。復興構想会議の提言は6月末に取りまとめられることになっているが、残念だがこの内容では力強い復興は果たせそうにない。(村)

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