月刊「ザ・リバティ」2023年6月号の特集「つぶれない経営─コロナ時代の経営心得─」では、厳しい時代だからこそ、お客様の心に寄り添ったサービスを行うことの重要性に迫りました。
今回は、クレームとの向き合い方と経営の関係について、民間企業や学校、病院、官公庁などから引っ張りだこの苦情・クレーム対応アドバイザーである関根眞一氏のインタビューの中で、本誌に掲載しきれなかった内容を3回に分けて紹介いたします。
1回目の今回は「クレーム対応の基本は、相手が何を言いたいか、よく聞くこと」。
クレーム対応の基本は「お客様の話をよく聞くこと」
関根 眞一
──元々、百貨店のお客様相談室で苦情やクレームの対応をされていたということですが、何に気を付けて対応されていたのですか。
関根眞一氏(以下、関): 私が勤めていた西武百貨店は、おそらく同業他社の中では一番早く、お客様相談室を設置して、経営者が苦情やクレームには敏感だったのだと思います。部長になる時にお客様相談室に異動したのですが、1年以上は本当にドジばかりでした。というのも、百貨店の販売部門にいる間は、苦情は、「なんとか押し返すものだ」と思い込んでいたからです。
でも、苦情に対応するうちに、「待てよ、百貨店側が悪いから苦情になっているのかな」「今まで何をしてきたのだろう」と気づいてから解決が早くなりました。正面からお客様の苦情を受け止めて、正直な対応をしなければ勝てない、かわしたら絶対ダメだと分かったのです。
苦情に対応する時は、まずは、自らの気持ちをフラットにし、相手の話をよく聞いて、「何が言いたいのだろう」とその場で考えることです。そして、不明解な点は見直しをすること。この会話も大事で、「大事な点ですから確認させてください」と前置きすれば、「確認してくれているのだな」「真面目に取り組んでくれるな」と相手に伝わるのです。
苦情に対応する自分自身の気持ちを整理しながら、相手の気持ちに沿った対応を考えなければいけません。
次に、解決を慌てないことです。何らかの対策を述べる時は、相手の表情の変化を読みながら、会話を細切れにして出して行くんです。「私どもの方としては、このような場合には、こんな対応を基本に考えますが」。そういう言い方をしていると、相手の表情に厳しさが増すか、僅かに笑みとまでは行かないまでも、表情が緩む変化が出るので、力がつけば、相手の要望を憶測することができ、やんわりと聞くだけになります。例えば「何かご要望はございますか?」は、取っ掛かりで、声を落としてお話しをする。そうすることで、苦情が収束に向かっていきます。