《ニュース》

米バイデン政権はウクライナへの継続支援を強調していますが、国内に目を転じると、治安が著しく悪化し、支持基盤に揺らぎが生じています。

イリノイ州シカゴ市では、急進的左派として知られる現職のローリ・ライトフット市長(民主党)が、2期目の再選を目指すも落選が確実となりました。現職が再選を阻まれるのは40年ぶりとのことで、住民による「判決」としてメディアが大きく報じています。

《詳細》

ライトフット氏の得票率が17%にとどまった一方、治安改善を訴えたポール・バラス氏(民主党)と、教職員組合の支持を受けたブランドン・ジョンソン氏(民主党)はそれぞれ、33%、20%の得票を記録しました(開票率99%の時点)。

過半数を獲得した候補がいなかったため、4月4日、両者の間で決選投票が行われる予定です。

ライトフット氏は、シカゴ市長としては初の黒人女性であり、レズビアンであることを公表していました。この度の再選で自身が負けた理由を、性別や同性愛者への差別だとしていますが、急激な治安悪化を受け、住民がライトフット氏の市政に意見をぶつけたとするのが、リベラルメディアを含め大筋の見方です。

ライトフット氏は2019年、腐敗防止と治安強化を約束して市長に就任しましたが、新型コロナウィルスの蔓延も受け、治安はさらに悪化。後手に回る形で警察予算の増強を打ち出すも、2021年には殺人件数が1000件を超え、1994年以降で最悪となりました。加えてそうした状況にありながら、ライトフット氏は警察組織に対して、新型コロナウィルス・ワクチンの厳しい接種義務を課すなど、機動力が問われる治安状況を無視するような対応を重ね、市民から強い批判の声が上がっていました。

治安の悪化ぶりは、企業がシカゴから本拠地を移すほどです。例えば、米航空機大手ボーイングは昨年5月、本社をシカゴからバージニア州アーリントンに移すことを発表しました。米建設機械大手のキャタピラーや米食肉加工大手タイソン・フーズも同年、本社をシカゴから移転することを発表しています。

シカゴを本拠地とするファストフード大手・マクドナルドからも、治安悪化を懸念する声が上がっています。同社の最高経営責任者(CEO) を務めるクリス・ケンプチンスキー氏は昨年9月、シカゴ経済クラブで、「シカゴで一体何が起きているのか?」「我々の都市が危機に陥っているという感覚が広く一般にある」と語り、次のように指摘しました。

「我々の店に来れば、毎日それ(無法状態)を最も強く感じられる」「我々の店では暴力犯罪が起きている。(中略)店ではホームレスの問題を目にするし、薬物の過剰摂取が起きている」

著しい治安悪化にも関わらず、シカゴ市警は今年3月、「強盗や侵入窃盗、窃盗はここ3年間で記録的な低さだ」「これら全ての犯罪が、ここ50年間で見たこともないほどに減少している」と公表し、さらに市民の反感を呼んでいます(市警長官はライトフット氏が負けた翌日辞任)。

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