「もうやってられない──」
カナダで強まるコロナ規制に対して、現地の20代女性は記者に怒りを顕わにした。国民はいよいよ我慢の限界を迎えている。
新型コロナウィルス蔓延防止をめぐり、カナダのトルドー政権は国民のワクチン接種を推し進めてきた。昨年10月には、連邦政府職員や国内で航空機や列車を利用する人々を対象にワクチン接種を義務化。さらに今年1月、アメリカとカナダを行き来するトラック運転手にもワクチン接種を義務付けた。
これを受けて1月28日、多数のトラック運転手がカナダ・オタワ首都に集結。数百台のトラックで中心部を占拠し、これによりアメリカとの国境を結ぶアンバサダー橋などが一部封鎖された。
カナダ政府の画一的な「統制に続く統制」に反感を抱く医療関係者や一般市民も、途中で合流。通称、「フリーダム・コンボイ(自由の車列)」と呼ばれる大規模なデモに発展した。
デモが勃発したオタワの近隣都市・トロント在住の20代女性はこう語る。
「コロナが流行り始めた当初、『ウィルスから人々を守るために、政府による規制は必要だ』という意見が多数でした。しかし、トルドー首相に言われて2回もワクチンを接種したのに、政府は3回目も強制しようとしています。最初の2回は何だったのでしょうか。彼(トルドー氏)の発言は聞き飽きました。マスコミがトルドー氏の肩を持っていることもあり、いまなお政権を支持している人もいますが、多くの人は彼の嘘に気づいています」
同じくトロント在住の50代女性はこう話す。
「一部のトラック運転手には、行き過ぎた人もいるとは思います。しかし、彼らの行動によって、人々は『カナダで何が起きているのか』を知るようになりました。国や国民を少し揺らさないと、誰も目を向けてくれないのです。私は、信念を掲げて立ち上がったデモ参加者を誇りに思っています。カナダ人はおしとやかな国民ですから、そういうこと(抗議デモ)は基本的にしないのです。(政府から)言われたことには何でも従う傾向がありますが、この度の件は一線を越えました。『もう、いい加減にしろ』ということです」
アメリカやイギリス、デンマークなど世界各国が、コロナ関連の規制について「生じる損失に比して効果が薄い」と判断し、緩和に向かう中、カナダ政府は世界の流れに逆行する形でコロナ規制を強化してきた。
今回の騒動は、国民の声を代表するものだったと言えるだろう。
トルドー政権をカナダ上院とアルバータ州政府が猛批判
国民による一連の抗議に対し、トルドー首相は2月14日、連邦政府に特別な権限を一時的に付与する「緊急事態法」を発動した。
同法に基づきカナダ政府はデモ参加者の銀行口座を凍結すると共に、デモ隊の取り締まりを目的に警察権限を拡大。18日には警察当局が機動隊や騎馬警官を投入してデモ隊の排除に動いた。
こうしたトルドー氏の判断に対し、アルバータ州のジェイソン・ケニー州首相は「近代カナダ政府による最大の過ちの一つ」とし、連邦裁判所に法的な異議を申し立てる事態となった。カナダ上院内での反対意見も強く、国内外から批判を浴びる中、トルドー氏は2月23日、デモ活動が収束したとして緊急事態法の解除を発表した。
トルドー氏の論は、「(緊急発動法は)最後の手段」であり、「カナダ国民を守り、人々の雇用を保護し、我々の機関に対する信頼を取り戻すため」というもの。確かに、橋の封鎖によって貿易にも影響が生じ、多額の経済損失を出しているのも事実だ。また、「トラック運転手らが自由を求める過程で、逆に一般市民の自由を奪っているのではないか」という声も一部上がっている。
緊急事態法の発動は「違憲」だった!?
だが、「そもそも緊急事態法の発動は憲法違反ではないか」という声も聞こえる。
条文によれば、緊急事態法は「緊急かつ危機的状況」「既存の法律では対応できない場合」「カナダの安全が脅威に晒されている事態」においてのみ適用を許されている。
つまり、果たしてトラック運転手らによる抗議デモはカナダの安全を脅かすような"脅威"だったのか、という点が問われている。
カナダ安全情報局(CSIS)は、この「脅威」を明確に定義している。「スパイ行為」「国益を損なうような、内密または欺瞞的である、外国の影響を受けた活動」「イデオロギー的目的を達成するための、深刻な暴力行為」「カナダ憲法に基づく政治体制を破壊しようとする違法行為」などがそれに当たるとされ、一方で「合法的な擁護や抗議は含まれない」と明記されている。
カナダのカールトン大学で国際関係学教授を務めるリア・ウェスト氏は、トルドー政権が緊急事態法を発動する前提条件をクリアしたのか、「真剣な疑問を抱いている」と表明している。
「主に非暴力的なデモによって、『カナダの安全は脅かされている』と本当に言えるのだろうか? 確実なのは、我々の『主権』と『領土保全』は危険に晒されていないことだ」
政府は「コロナのおかげで、統制経済の味を覚えてしまった」
カナダ人が自由を求めて立ち上がる背景には、トルドー政権による、憲法違反にもなりかねない「恣意的な法解釈」がある。アルバータ州政府なども異議を申し立てているように、トルドー政権が下した判断は、「人権侵害」にすらなり得る。
さらに、この度政府はデモ参加者らの銀行口座を凍結したが、比較政治学などを専門とするカールトン大学のエリオット・テッパー教授は、「長期的に、個人資産を追跡される恐れ(もある)」と指摘している。
つまり政府が、"不穏分子"であるデモ参加者らを監視対象とし、場合によっては経済的抑圧を加えることも可能になるということだ。
コロナ禍で世界的に規制が強まる中、大川隆法・幸福の科学総裁は「民主主義国でも、全体主義に流れる傾向がある」と警鐘を鳴らしてきた。大川総裁は著書『減量の経済学』において、次のように述べている。
「このコロナのおかげで、(日本の)政権の方は、統制経済の味をまた覚えてしまいました」
「基本的人権のなかには、自分で判断する権利、自由意思を尊重する権利というのが、やはり入っているものではあるので、『勧める』ことはできるけれども、『義務づける』ということになりますと、気をつけないと危ないわけです」
「『非科学的だ』とおっしゃる方がいらっしゃるのであまりこういうことを言いたくはないのですけれども、権力による猛進・狂信みたいな押しつけに対しては、ある程度、自分の意志でやはり考えたほうがいいということはあると思います」
日本政府も「国民の命と暮らしを守る」という名目で統制傾向を強めているが、政府による強権的な義務付けを続けていれば、いつの間にか「民主主義国家」としての前提が失われかねない。カナダ政府の動きを反面教師とし、果たしてどこまでが許されるラインなのかを、立ち止まって考え直すべきではないか。
【関連書籍】
『減量の経済学』
幸福の科学出版 大川隆法著
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