殺害されたビンラディンがパキスタンの軍部に近い豪邸に住んでいたことから、アメリカはパキスタン政府への不信(mistrust)を強めている。4日付英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)のトップ記事から概要を紹介する。
米国はパキスタンを、戦略的に最重要だが同時に極めて信用のおけない相手と見なしている。ある米政府の情報機関高官はFT紙にこう話した。「パキスタン政府と、米国が深刻な脅威と見なしている組織との関係について、我々は怠りなく注意している。米国とパキスタン双方の情報機関は協力関係にあるが、同時にまた非常な緊張関係にある」
米国の当局筋が特に懸念しているのは、パキスタンの省庁間情報局(Inter-Services Intelligence agency)とイスラム原理主義グループの結びつきだ。民主・共和両党の議員は3日、米国がパキスタンに与えている援助を中止ないし精査すべきだと政府に要求したが、オバマ政権は渋っている。米国はアフガン戦争に関してパキスタンを頼っているので、パキスタンを怒らせたくないからだ。
パキスタンのザルダリ大統領は、自国政府がテロと取り組んできた実績を弁護する発言をし、「パキスタンがビンラディンをかくまったという主張には根拠がない」と述べた。パキスタン政府は米国に、今後は今回のような非公認で一方的な行動(unauthorized and unilateral action)を取ることのないよう警告した。
こちらが情報を取ることは、相手から情報を取られることと表裏一体の関係にある。虚々実々の情報戦に、日本人も情報戦オンチのお人よしではいられないと改めて思わされる。(司)
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