2020年5月号記事
Book
著者Interview
宇宙人との「コミュニケーション」を考える
「宇宙人」を題材に、「見知らぬもの」との出会いの研究をまとめた著者に話を聞いた。
人類学の研究者が「コミュニケーション」を論じる際、選べる題材は数多くある。書籍『見知らぬものと出会う』では、さまざまなSF小説で描かれてきた「宇宙人」を題材にする。同著の考察には、大川隆法・幸福の科学総裁が行う「宇宙人リーディング」も登場する。著者の木村大治・京都大学教授に、話を聞いた。
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京都大学教授
木村 大治
(きむら・だいじ)人類学者。京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科教授。著書に『共在感覚』(京都大学学術出版会)など。
──なぜ、「宇宙人類学」の研究を始めたのですか?
木村氏(以下、木): 人類学では、「自分とは文化も習慣も違う他者」のことを調べます。私は長らく、アフリカのコンゴ民主共和国と、カメルーンで調査をしてきました。その中で、相手のことを理解できないと感じることも多く、コミュニケーションが「できる」「できない」ということについて、深く考え始めました。
研究を通じて、何かの性質を調べる時には、極端なものを考えるというのも有効ではないかと思ってきました。そして「極端に分からない他者とは何か」ということで、「宇宙人」にたどり着いたのです。
宇宙人は、どこかで我々と共通の知性を持っているけれども、何かが欠落していたり、違いがある。そういう存在とのコミュニケーションで何が起こるか、という思考実験をしています。
哲学の分野では「火星人」を引き合いに出して議論する学者も多く、「宇宙人の比喩」もいろいろ出てくる。研究として成立するだろうと考えました。