円が戦後最高値の1ドル79円を16年ぶりに抜いて、一時76円台を記録した。
震災や原発事故の影響で日本の損害保険会社が保険の支払いのためにドル資産を売り払って円に換えるのではないかという海外投資家の思惑が広がった。野田佳彦財務相は、介入を行なうかどうかのコメントは出していない。
大震災という未曾有の危機に、通常ならその国の通貨が売られるところだが、なぜ「円高」に向かったのか。投機筋の思惑が大きく影響したのは確かだが、1995年の阪神大震災の後に、円高が進んで、当時の戦後最高値であった79円を記録したことも、投資家の脳裏にあっただろう。すっかり「地震の円買い」が定式化した形だが、そもそも日銀が円の供給を抑えていたために、何かあるたびに、市場は円買いの方向に反応する状態になっていたことも大きい。もっと早い段階で日銀が腰を入れた金融緩和を行なっていたら、円高に向かうとしても、もう少し穏やかなものになっていたはずだ。
内情はどうあれ、最近の為替を見る限り、「有事の円買い」がすっかり市場の癖になっている。今の政府には、それに見合うだけの実力が伴っていないように見えることが、最大の不安要素だ。(村)
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