2018年9月号記事

米中決戦インタビュー

金正恩は習近平からトランプに乗り換える

中国研究の専門家に、米朝会談後の国際情勢の見通しについて聞いた。

(編集部 長華子)


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中国問題専門家

遠藤 誉

(えんどう・ほまれ)1941年旧満州国生まれ。中国革命戦を経験し53年に日本帰国。東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士。著書に『習近平vs.トランプ 世界を制するのは誰か』『毛沢東 日本軍と共謀した男』(中文版も)など多数。

『卡子(チャーズ) 中国建国の残火』

1948年、中国共産党は、長春を食糧封鎖し、数十万にのぼる人民の命を奪う。著者(当時7歳)が見た真実が歴史に刻まれる。

―6月に行われた米朝首脳会談をどう見ていますか。

一般的には、金正恩氏が勝利し、トランプ氏が譲歩しすぎたと考えられています。そして真の勝利者は中国だと言う人もいますが、そうではありません。

また、中国は、北朝鮮への制裁を解除し始めたので、表面的には中朝蜜月に見えるかもしれません。でも実は、北朝鮮は建国以来、中国に対するすさまじい恨みを持っています。

1950年6月に始まった朝鮮戦争で、北朝鮮を応援した中国人民解放軍は、北朝鮮の建国の父である金日成を尊重せず、中国から派兵した朝鮮人の軍隊(延安派)を重用。戦後、金日成は延安派を全員粛清します。

また 金正恩氏は「中国を千年の宿敵」と呼んでいます。 ですから、中朝の血の同盟は虚構。核開発をしてアメリカを交渉のテーブルに引き出すことに成功した 金正恩氏は、アメリカと肩を並べて、「中国を見返してやる」という気持ちを強く持っている のです。

次ページからのポイント

金正恩はアメリカ側につく

一つの中国を覆すトランプ