《本記事のポイント》
- 世界で活躍する日本企業・技術はたくさんある。
- 例えば、日本企業の新幹線やトルコ海峡での地下鉄建設、海水を真水にする膜の技術など。
- 未来を悲観するのでなく、自国を客観的に評価する眼を持つことが必要。
このところ、神戸製鋼所やスバルの不正など、日本企業についてのネガティブなニュースが多かった。だが、世界の役に立っている日本企業は、たくさん存在しているのも事実だ。
本誌12月号(10月30日発刊)では、「世界に挑む日本の中小企業」という特集で、世界に挑む中小企業を紹介した。本記事はその「大企業編」として、日本企業の優れた技術を紹介したい。
「新幹線の専用線」という日本ならではの工夫
日本の新幹線は優れているとよく言われるが、遅れの年間平均はなんと1分未満。開業当初から自動列車制御装置を導入し、ほぼ全ての列車で車両の長さ、ドアの位置、座席数を同じにする工夫で、効率化を図っている。分刻みのスケジュールにもかかわらず、列車事故による死傷も0件。ヨーロッパの新幹線は、在来線や貨物と線路を共有しているが、日本の新幹線は踏切がない専用線路で運行するシステムにしたため、衝突事故を回避できたのだ。
高層エレベーターは、日本企業がトップ3を独占
高層エレベーターにおいては、速度面で日立、三菱電機、東芝のエレベーターが世界1~3位を独占している。世界最速のエレベーターは、日立製。中国・広州にある世界一の高層ビルCTF(高さ530メートル)向けに、分速1260メートル(時速75.6キロメートル)の超高速エレベーターを開発。地上階から95階まで、わずか45秒で到達する。日本の大手メーカー4社での世界シェアは25%ほどだが、超高速で安全性、快適性の高いエレベーターの開発で、世界で受注拡大を目指している。
極めて工事が難しいトルコ海峡の地下鉄も、日本企業が建設
トルコの最大都市イスタンブールを二分するボスポラス海峡を横断する地下鉄を建設したのは、大成建設。ボスポラス海峡は極めて海流が速く、しかも上下で逆向きという複雑な海流で、高度な建設技術が必要だった。大成建設は、トルコ企業と協力してその60メートルの海底に世界最深のトンネルを掘り、地下鉄と駅の建設に成功した。「トルコ150年の夢」と呼ばれた事業を成し遂げ、トルコ国民から大変感謝された。
日本の膜技術で海水を真水に変え、水不足に貢献
真水が不足している中東では、海水を濾過して真水にできる、日本の「膜」の存在感が高まっている。東洋紡の海水淡水化膜のシェアは、中東全体で5割に上る。特にサウジアラビアでは85%と圧倒的だ。日立と東レ、三菱重工も、サウジアラビアで海水淡水化プラントを建設し、サウジと日本の経済面での協力関係は、強まっている。
「出荷数世界一」となったホンダジェット
ホンダの小型ビジネスジェット機「ホンダジェット」は、2017年上半期に24機を納入。小型ビジネスジェット機市場で米セスナを抜き、なんと世界一の出荷数を達成した。その性能は、最高速度、最大運用高度、上昇性能、燃費性能の面でずば抜けている。さらに、高級感のある内装と美しい外観で、機体も5つのカラーバリエーションがある。日本は航空分野が弱いと言われてきたが、ホンダジェットに続く、新たな日本製の航空機の登場に期待したい。
航空機向けエンジンで世界シェア70%
同じく航空業界でいうと、IHIは250人乗り以上の航空機向けエンジンで世界シェア70%。ボーイングの新型旅客機777Xに搭載されるエンジンプログラムにも、一部参画した。また、IHIは自衛隊のP-1固定翼哨戒機用として、純国産のターボファンエンジンを開発。JAXAに導入して技術の実証を行い、将来的には純国産のエンジン開発につなげる計画だ。これも、日本に航空産業をつくる布石となる。
日本は国産・ステルス超音速戦闘機を持てるのか!?
さらに防衛という点でいうと、敵国のレーダーに映らずに、基地を攻撃できるステルス戦闘機を数機持っているだけで、防衛力は大いに高まる。ステルス実証機である「X2」、通称「心神」は、三菱重工などが機体をつくっただけでなく、IHIがジェットエンジンを国産化した戦後初の戦闘機。防衛省はこれを元に、ステルス超音速戦闘機の国産化を目指す。その気になれば、日本で軍事産業を興すことも可能なはずだ。
海外の外国人からは、「日本人は自国の将来について悲観的過ぎる」と指摘されている。「メイド・イン・ジャパンは高品質」というのが、外国から見た大半の評価であり、客観的な見方だろう。ネガティブな報道に惑わされず、冷静に自国を評価する眼も必要だ。
(山本泉)
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