軍艦島には、最大で5000人を超える人々が生活していた(写真は渡辺正裕)。
2017年11月号記事
地域シリーズ・長崎
元島民が語る
軍艦島は長崎の恥か、誇りか
日本本土最西端の地に、朝鮮半島から2つの脅威が迫っている。
1つは朝鮮人の徴用工問題、もう1つは難民だ。
国難の最前線に向かった。
(編集部 山本慧/写真 岡本淳志)
軍艦島を世界遺産にする会
理事長
坂本道徳
プロフィール
(さかもと・どうとく) 1954年、福岡県に生まれ、66年に父親の仕事で端島に移住。2003年に「軍艦島を世界遺産にする会」を立ち上げ、ガイドや講演活動を行っている。
「あの島が軍艦島です」。パシャパシャパシャ。
"廃墟の島"で知られる長崎県の端島(通称、軍艦島)。ガイドの声を聞いた観光客は「わー、すごい」と声を上げて観光船から身を乗り出し、カメラのシャッターを切る。
ガイドを務める坂本道徳さん(63歳)は、小学6年生から7年間、この島で暮らしていた。観光客が色めき立つのをよそに、空を眺めるような目でこう語る。
「あれは廃墟じゃないんです。今も私の中で生きています。島を訪れると、残された色んな電化製品が突然しゃべり出すんですよね。『あのころは良かったね』って。でも、今や私の故郷がこんな形で注目されるとは……」
軍艦島は、1890(明治23)年に三菱が所有し、石炭の採掘で日本の近代化に貢献した。大正時代には、日本初の鉄筋コンクリートの集合住宅が建設され、多くの家族連れが移住。最盛期の人口密集度は東京の9倍を超え、世界一を誇った。
その後、石炭から石油の時代へと変わり、1974年に閉山。島民は島から離れた。坂本さんは朽ちていく故郷を残したい思いで、世界遺産の登録を目指す団体を立ち上げ、2015年に登録を勝ち取った。軍艦島は今や、観光客が殺到する人気スポットとなった。
しかし、日本が誇るべきこの遺産が国際的に物議を醸している。
軍艦島は監獄島?
映画ポスター。
韓国で7月、先の大戦中に、軍艦島の炭鉱で働いた朝鮮人の悲惨な様子を描いた映画「軍艦島」が公開され、650万人超の動員を記録した。
映画のあらすじはこうだ。
戦争末期の1945年、日本軍によって"強制徴用"され、軍艦島にやって来た朝鮮人が、劣悪な環境下で、危険がつきまとう炭鉱労働を強いられる。
食事は雑穀で、寝床は足で踏めば海水がにじみ出る1畳程度の空間。銃を持った警備兵に常に監視され、仕事でミスをすれば虐待を受け、逃亡を図った者は殺される。
その後、長崎に原爆が投下されると、炭鉱会社はこれまでの"犯罪"を隠滅するために朝鮮人の皆殺しを計画。それを察知した朝鮮人は、銃を持って抵抗し、決死の脱出劇を繰り広げる―。
映画は今後、113の国と地域で販売される人気ぶり。映画監督は、フィクションも含まれているとしているが、日韓の歴史に疎い外国人はノンフィクションだと信じ込むだろう。すでに韓国では、「軍艦島=監獄島」という呼称が定着しており、日本の悪行を知ろうと島を訪れる韓国人が増えている。
坂本さんは韓国のテレビ局に隠し撮りされたり、韓国から大量の迷惑メールを送り付けられたりした。歴史認識をめぐって韓国人に詰め寄られたことも一度ではない。
徴用工問題は解決済み
映画は韓国の恥をさらす / 九州大学 教授 三輪宗弘氏
朝鮮有事は対岸の火事ではない 長崎が「難民の港」になる日 / 佐世保隊友会 支部長 江見雅博氏