アメリカ同時多発テロから、11日で15年が経つ。
世界貿易センタービルや国防総省本庁舎に航空機が衝突した後、アメリカは、アルカイダへの報復として2001年にアフガニスタンへの空爆、2003年にイラクへの攻撃を開始した。
果たして、アメリカの正義は、「世界的な正義」に適っていたのか。
アメリカの犠牲者3000人の報復として、イラクでは10万人以上が犠牲に
このテロで亡くなったアメリカ人の数は3000人だった。
一方、情報統制が敷かれていて正確な数は分からないが、イラク戦争でのイラク人(民間人)の死者は、約10~22万人に上ったという(2008年の世界保健機構による調査。50~60万人という調査結果もある)。
この数を見ると、「報復としての正当な攻撃はどの程度か」という判断がなされていないように見える。アメリカの過剰攻撃と非難されても仕方ないだろう。
また、イラク戦争に勝利したアメリカは、イラクのフセイン元大統領を処刑した。その後、本来ならば、イスラム教のスンニ派とシーア派が共存できるような政府をつくる必要があったが、アメリカはスンニ派を排除してしまった。スンニ派には優秀な人材が多かったが、シーア派政権がスンニ派を弾圧し始めると、それらの優秀な人材が集まって、その後、「イスラム国」の中枢を担うようになってしまった。
「イスラム国の殲滅」は世界的な正義に適っているのか
オバマ政権の誕生以降、アメリカは「自国中心主義」になった。現在進んでいる大統領選でも、共和党のトランプ氏は、孤立主義的な発言が目立ち、民主党のクリントン氏も、紛争地域への軍事介入に慎重な世論に配慮している状況と言える。
また、中東でもアメリカ本土でもアメリカ人の命が奪われている国民の「怒り」を受け、トランプ、クリントンの両氏ともに、「イスラム国の殲滅」を掲げている。だが、こうした国民感情を利用し、他国を攻撃するのは、「9.11」後と同じ状況だ。
アメリカ空軍大学教官のジェフリー・レコード氏も、著書でこう指摘している。
「多文化に対するアメリカの無理解は、わが国の外交政策をいまだに蝕んでいる。ベトナム戦争やイラク戦争の例でもわかるように、わが国の姿勢は日本とのあの大戦の頃と何ら変わるところがない」(『アメリカはいかにして日本を追い詰めたか』)
「アメリカの正義」は、「神の正義」であったか
大川隆法・幸福の科学総裁は8月下旬、キング牧師の霊を呼び出したところ、キング牧師の霊は、次のような趣旨の発言をした。
「(イラク戦争で)イラク人を何十万人も殺し、サダム・フセイン大統領を絞首刑にしたのは合法的ではなかったと思う。世界的公平さ(world fairness)に基づくものではなく、単なる仕返し(revenge)だった。これらの戦争は、神の求めたものではなかった。『アメリカの正義』であったことは分かるが、神によるものではなく、アメリカ国民の怒りによるものだったと思う」
「アメリカの正義」は、「アメリカに都合のよい正義」である場合が多く、地球レベルでの公平な観点から判断しているとは言い難い。もちろん、イスラム国にも問題はあるが、殲滅が許されるような「悪魔の国」ではない。アメリカは、統治のためにシーア派のみを登用し、スンニ派を含めた民主的な政府をつくることに失敗した。やはり、アメリカの戦後処理のやり方に問題があったのだ。
アメリカは正しい反省を経て、「世界の警察官」に復帰すべき
現在、イラクは、イランの影響が強まっている。こうした状況を「介入主義の失敗」と見て、トランプ氏もクリントン氏も、「"国づくり"はしない」という立場をとっている。
だが、アメリカが「自由で民主的な国をつくる」という理想主義を捨て、孤立主義に傾けば、世界のリーダーがいなくなり、世界はいっそう混沌状態に陥る。アメリカに「世界的正義」に基づいた判断を行ってもらわなければ、世界中が困るのだ。
そのために、アメリカは「勝つためにはなりふり構わず、一般市民も虐殺していい」「勝利すれば相手国の事情を考慮せず、"アメリカの正義"を押し付けていい」などといった、これまでのやり方を反省する必要がある。
近い将来、アメリカが他者への寛容性を深めて、正義のために孤立主義をやめ、再び「世界の警察官」の役割を担うことを期待したい。そのアメリカを助けるため、日本も一役買う必要があるだろう。
(山本泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『イラク戦争は正しかったか』 大川隆法著
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