金融機関を縛ってきた規制が大幅に緩和されそうだ。
金融庁は、金融機関の経営内容を調べるために実施している、金融検査マニュアルを抜本的に見直す考えを示した。来年半ばまでに新しい検査手法をまとめるという。このほど読売新聞が報じた。
金融検査マニュアルとは、1990年代後半、巨額の不良債権を原因とした、相次ぐ金融機関の経営破たんを受け、金融機関が適切に不良債権を処理するために作られたもの。1999年に運用が始まった。
現行のマニュアルでは、融資に必要な担保の基準、貸出先の経営状況の把握の仕方などが厳密に決められているという。バブル崩壊後、金融機関がつぶれないようにするための、金融庁の“配慮"だったというわけだ。
ただ、記事によれば、マニュアル作成後、国境や業界をまたいだ金融機関の活動が本格化するなど、マニュアルが金融機関の活動の実情にそぐわない面が大きくなったという。
バブル崩壊以後、リスクをとらない銀行が増えた
その中でも一番の弊害は、銀行が不良債権を生み出さないことばかりを考え、リスクを取って新しい企業や産業を育てようとしなくなったことだろう。これは、バブル崩壊後、日本のGDPが25年にもわたって、約500兆円で足踏みしていることと無関係ではない。
銀行の使命とは、リスクを取って、可能性のある事業者を見出し、そこにお金を貸し、未来の産業や企業を育てること。明日の大企業を見抜く力を持ち、彼らの可能性に賭けることは、資本主義の精神でもあり、国を発展していく基礎になる。
マニュアルの見直しは、金融緩和を続け、マイナス金利を導入しても、企業がなかなかお金を借りないという状況を打開することにつながるかもしれない。
さまざまな規制を設け、民間企業の手足を縛り、経済活動を鈍らせていることが、国としてもようやく分かり始めてきたのだろう。
規制緩和によって、金融機関が企業に融資し、融資先が発展していけば、銀行もその恩恵を受け、また、次の企業に融資できる。この循環の中で、国の経済は発展していく。今回のマニュアルの見直しが、バブル崩壊で失われた本来の使命に、銀行が目覚めるきっかけになることを願いたい。
(冨野勝寛)
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