慰安婦問題の解決を目指し、昨年12月に交わされた「日韓合意」に関する動きが活発化している。

今月27日、日本政府は、8月中に、韓国政府が設立する慰安婦支援の財団に10億円を出す方針であることが、新聞各紙で報じられた。

翌28日には、韓国政府が、元慰安婦の支援を行う「和解・癒し財団」を設立。ソウル市内で初の理事会を開いた。

日本政府は当初、ソウルの日本大使館前に違法につくられた慰安婦像が撤去された後に、韓国政府が設立した財団に10億円を出すという姿勢だった。だが、この方針が変更され、日本が先に10億円を出すことで、早期に像の撤去を実現しようというのだ。

この動きについて、29日の新聞各紙は、「慰安婦問題決着へ財団」(読売新聞)、「慰安婦財団 支援へ前進」(朝日新聞)などと報じているが、安倍政権が重い"罪"を犯そうとしていることについて、ほとんど触れていない。

「強制連行」「性奴隷」は嘘

慰安婦問題をめぐる議論で、明確にすべきポイントは、「当時の日本軍が、組織的に女性たちを強制連行したか否か」「女性たちを性奴隷として扱ったのか否か」である。

現代の日本にも存在するように、当時、性的なサービスを商売とする女性がいたことは間違いない。ただ、彼女たちが、軍や政府に拉致されたり、奴隷のように扱われたという証拠は、どこにもない。戦後につくられた嘘だ。

もちろん、貧しい家庭に生まれた女性が、自分が知らないうちに親に売られたり、あっせん業者に騙されたりしたケースはあるだろう。そうした方々の悲惨な体験には同情を禁じ得ない。

村山政権を上回る過ちを犯そうとしている

しかし、日本政府は「慰安婦を強制連行していない」「性奴隷にしていない」という事実を、明らかにしないまま、10億円を出すというのだ。

慰安婦問題が注目された1995年、村山政権は、政府出資の下で、「アジア女性基金」という財団法人を立ち上げ、寄付を募り、元慰安婦に「償い金」を支給した。「日本政府が補償した」と批判されないための苦肉の策と言える。

だが今回、安倍政権は、国民の血税である10億円を払おうとしている。韓国側の財団に払うと言いつつも、事実上の「戦後賠償」になってしまう。

海外の人々の目には、「日本は強制連行や性奴隷を認めた」としか映らない。

つまり、安倍政権は、現代、そして未来の日本人に、"原罪"を負わせようとしている。歴史問題において、安倍晋三首相が忌み嫌っていた村山政権の失政を、さらに上回る過ちを犯そうとしているのだ。

「真実」を明らかにして問題に終止符を打つべき

「やっていないこと」を、まるで「やった」かのように認め、手っ取り早くお金で黙らせようという姿勢は、逆に、韓国の人々をバカにしていないか。

慰安婦問題は長年にわたって何度も蒸し返されてきたが、この問題に終止符を打つには、「真実」を明らかにする以外にない。(格/手)

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