2月9・16日号「SAPIO」が、劉暁波氏のものとされる論文を「日本で初めての全文翻訳」として3ページにわたり掲載している。2008年3月、チベットの暴動事件を武力で鎮圧した中国に対し、世界各国は批判を強めた。すると中国人は「愛国主義」の名のもと、中国を批判する各国で暴力行為を繰り広げた。論文はその直後に書かれたものといい、評論家の石平氏は同誌で、この論文が間違いなく劉氏によるものだとしている。
同論文は、中国において許される唯一のデモが「愛国デモ」であるという事実を改めて教えてくれる。日本や欧米など自由主義社会では政府批判のデモが当たり前だが、中国には「政府を支持する、または外国を批判する」デモしかないとは考えてみるとグロテスクな光景。同論文(日本語訳)の結論はこうだ。
「この種の愛国はやはり支離滅裂な愛であり、怯懦で、下品で、おかしな愛なのである。どのような立派な理由であれ、政府支持集会・デモのほとんどは独裁国家で発生する。(中略)現在の北朝鮮とキューバは何かと言うと盛大な反米集会・デモを開催する。(中略)この種の恩典で許可されたデモは、勇気の表れと言うよりも、懦弱の上演と言った方がいい。強烈な『愛』の表明と言うよりも、胸に満ちた『恨』の発散と言った方がいい。自らの頭で考えた結果と言うよりも、操られた盲目と言った方がいい」
デモの自由が歪められた結果、中国の民衆は「愛」の名を借りたデモで「恨み」を発散させるしかないとは、悲しいことだ。信教の自由や言論の自由と並び、中国民衆が集会の自由を享受できる日が待たれる。(T)
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