アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が18日から19日にかけて、フィリピンのマニラで開かれた。19日に発表されたAPEC首脳宣言では、フランスでの同時テロやロシア旅客機の墜落などを例示しつつ、「あらゆるテロ行為を非難する」とし、テロと戦うために国際協力や連帯が不可欠だと強調した。
今回、話題の中心になったのが「自由貿易圏構想」のあり方をめぐる米中の激突だ。
自由貿易圏構想をめぐる米中の激突
両国は、各々が主張するアジア地域での「自由貿易圏構想」をアピールし合った。
アメリカは、TPPこそがアジア地域の経済協力モデルだと訴えた。オバマ米大統領は18日、TPP参加各国の首脳会議で「TPPはこれまで締結された貿易協定の中で最も基準が高く、最も先進的なものだ」と主張している(19日付ウォール・ストリート・ジャーナル電子版)。
一方、中国は、TPPに対抗してアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を提唱。習近平国家主席は同日、「さまざまな地域自由貿易協定構想が出現しており、分散化への懸念が生じている」とTPPを批判しつつ、「我々はFTAAPの実現を加速させ、地域経済の統合を進める必要がある」と呼びかけた。
中国は追い込まれつつある?
今回のアピール合戦からは、中国の経済面での焦りが伺えた。APECに参加した21カ国・地域のうち、日米など12カ国がTPP交渉に大筋合意し、インドネシアやフィリピン、韓国などもTPP参加に関心を示しているためだ。アジア地域の自由貿易圏構想も、TPPに基づいて進められる可能性が高い。
TPPは、関税撤廃や経済ルールの自由化だけでなく、強制労働の禁止や環境保護の徹底などの人権を守るための規定があり、知的財産権にも高い基準が設けられている。これらに対する意識の低い中国は、今のままではTPPに参加できない。
中国は、軍事面でも各国の批判を集めている。APEC首脳会議で中国は、南シナ海の人工島埋立てが議題に上がらないよう躍起になっていた。しかし、日米首脳会談では、南シナ海での中国の軍事拡張が話題に上り、安倍晋三首相は「南シナ海への自衛隊派遣についても検討する」と話した。
中国は、徐々に包囲されつつあるようだ。TPPを通じて、中国を人権や知的所有権を守る国に変革させることが望ましい。また日米は、南シナ海への自衛隊派遣も視野に連携を強め、中国のアジア地域での軍拡を押し止めるべきだ。さまざまな方面からアプローチをかけ、中国に民主主義国家への変革を促す必要がある。(泉)
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