維新の党を離党した橋下徹・大阪市長が、10月に新党を結成する。新党には、橋下氏に近い維新の党に属する大阪選出の国会議員らが加わる見通しだ。大阪府の統治機構改革である「大阪都構想」などを掲げていた維新の党だが、"大阪と抗争"を繰り広げた結果、結党から約1年で分裂することになる。

橋下氏が新党の結成を急ぐのは、11月に大阪府知事選挙と大阪市長選挙のダブル選を控えているためだ。この選挙で新政党は、「大阪都構想」を訴える方針である。

しかし、約7億円の税金を使って行われた5月の住民投票により、「大阪都構想」は否決された。橋下氏が再び争点にする道理はない。むしろ、市民の審判を仰ぐべきは、大阪の経済力を衰退させてきた橋下政治だ。

大阪からの企業流出が続く

2014年までの10 年の間、大阪から転出した企業数は、転入の1523件を超える2424 社になり、転出超過が続いている。転出先で最も多いのは、東京ではなく、兵庫県だというところにも事態の深刻さがうかがえる(2番目は東京、3番目は奈良県)。

橋下氏は、新党で定める綱領のたたき台で「首都圏一極集中から多極分散型構造への移行」として東京への一極集中を変える方針を示しているが、まずは大阪の企業流出を防ぐのが先でないか。

また、長らく問題になっている大阪市での生活保護受給率は、高止まりのまま。その数は約15万人で、実に市民の18人に1人が生活保護を受け取っている。これは、全国平均の3倍の数値だ。

京都市・福岡市は成果を出している

橋下氏は、そうした現状を「都構想が実現しないからだ」と責任転嫁するかもしれないが、他の都市ではどうか。

大阪市と同じく、政令指定都市の京都市では、2000年に「10年後の観光客数を5千万人にする」という目標を設定。その後、観光振興策を手掛けたことで、09年には目標を達成し、13年の観光消費額は7千億円を超えた。「世界の観光地・京都」の地位を固めつつある。

高島宗一郎氏が市長を務める福岡市では、政令指定都市と東京23区の中で、企業の開業率が1位(7.1%)となり、起業する若者の割合も1位(12.3%)に輝いた。英情報誌が昨年発表した「世界で最も住みやすい25の都市」でも、福岡市が10位にランクインするなど、競争力を増している。

これらの都市では、着実に成果を上げている。しかし、橋下氏はと言えば、一向に「大阪の地盤沈下」を阻止することができず、今度は目先の収入欲しさのためか、カジノ誘致に積極的な姿勢を見せるなど、大阪を良くしようとしているとは思えない。そろそろ、大阪府民は、大阪を衰退させる橋下政治の本質に気づくべきだ。(山本慧)

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2015年7月号記事 政治家は大局観を持ち赤心の人であれ 大阪都構想否決で「橋下劇場」に幕 - The Liberty Opinion 4

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2014年4月号記事 地方が国政を振り回すのは亡国の妄想 - 橋下大阪市長の劇場型政治の終わり - The Liberty Opinion 3

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