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《本記事のポイント》

  • 小泉大臣の「セクシー」発言が物議を醸す
  • 重要なのは、大臣の言動が政府の方針とズレているか否か
  • 脱原発を進めれば、日本の電力体制は危うくなる

このほど米ニューヨークで開かれた会見で、気候変動をめぐる日本政府の対応について、「気候変動のような大きな問題は楽しく、クールで、セクシーに取り組むべきだ」と述べた小泉進次郎環境大臣が批判を浴びている。

エネルギー政策は国家の存亡に関わる重要テーマであるため、セクシーという言葉が適切であるのかが、国内外で物議を醸している。

しかし、より重要な問題は、大臣の言動と政府方針との一貫性だろう。

政府方針とのズレはどうなる?

小泉氏は大臣就任の会見で、原発政策への考えを聞かれ、「どうやったら残せるかではなく、どうやったらなくせるかを考えたい」と答え、脱原発の可能性に含みをもたせている。かつて、原発を推進する政府の対応について「申し訳ない」と謝罪した小泉大臣。父親である小泉純一郎元首相は「脱原発」を掲げているため、小泉大臣も「脱原発派」と目されている。

ところが、政府は脱原発の方針をとっているわけではない。

政府は、温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「脱炭素社会」を目指すため、「小型原発の開発」を視野に入れている。6月には「原子力の利用を安定的に進めていく」という文言が入った長期戦略を策定。小泉大臣が冒頭の会見で「減らす」と述べた石炭火力発電所についても、政府は成長戦略として世界への輸出に力を入れている。

小泉大臣の一連の発言は、政府の方針とは異なる点が散見される。そのため、政府が掲げる戦略とのズレが生じていると見られているのだ。これは、セクシーという言葉遣いより、国の信用に関わる重大な問題であろう。

発電量の83.4%が火力発電に依存

現在、日本の電力発電量の83.4%が、石炭や液化天然ガスを使った「火力発電」となっている(平成28年度資源エネルギー庁の資料)。火力発電が異常に増えた要因は、原発を止めたことにある。

これに対し脱原発派は、原発や火力発電を否定し、再生可能エネルギーの普及に期待を寄せている。だが、再生可能エネルギーの発電量(水力を除く)はわずか7.7%しかなく、全電力需要を満たす水準に至っていない。

今後も、再生可能エネルギーの供給が増えるとみられる。しかし、だからといって、天災などに弱い再生可能エネルギーに頼り、原発をなくすのはあまりにリスクが高い。原発を再稼働させ、火力発電の依存度を下げるのがベターな選択だろう。

(山本慧)

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