1日を「25時間」にする自動運転技術 日本が国際競争で生き残るために

1日を「25時間」にする自動運転技術 日本が国際競争で生き残るために

 

安倍政権が成長戦略の一環として発表している『未来投資戦略2018』。この具体的施策として最初に登場するのが自動運転技術です。政府は自動運転技術を「生活」と「産業」を変える技術と位置づけ、国家プロジェクトとして取り組む方針です。

 

この流れは日本だけのものではありません。ドイツや中国も国を挙げて自動運転に取り組んでいます。また、アメリカやイスラエルの企業も大きな存在感を示しています。

 

なぜ、自動運転車の開発は盛んなのでしょうか。

 

 

時間を創造し、人生の付加価値を高める自動運転技術

自動運転の定義や段階はさまざまですが、最終的には現在人間が行っている運転を機械で自動的に行うことを目指しています。そうなれば、今まで運転に束縛されていた時間が自由に使えるようになるわけです。

 

これがどれだけインパクトがあるか考えてみましょう。フランスの自動車メーカーのシエトロンが調査会社のCSAリサーチに委託した調査結果によると、スペイン人は平均して人生の2年9ヵ月を車の運転に費やしているとのこと。ちなみに、20歳から65歳までの45年間、平均して毎日1時間運転した場合、人生の運転時間は2年程度となる計算です。

 

自動運転が実用化すれば、多くの人の時間が生まれます。さらに、自動運転技術は渋滞を解消すると言われ、これも時間を生みだすことになります。

 

いち早く部分的な自動運転の実用化に成功した独アウディのルペルト・シュタートラー社長は「人々に1日の25時間目を提供する」と語りました。

 

自動運転技術はこの他にも安全性の向上や、高齢化や人手不足への対応など、あらゆる人に移動の自由を提供します。

 

こうしたさまざまなメリットが合わさった場合の経済効果はとても大きなものとなります。インテルの調査では、自動運転の世界的な市場規模はサービスも含め、2050年までに7兆ドルになるとのこと。これは現在の日本とブラジルのGDPを合計したものよりも大きくなります。

 

自動運転技術は幅広い分野に発展をもたらす可能性を秘めています。このチャンスを求めて、各国はしのぎを削って技術開発に乗り出しているわけです。

 

 

日本は出遅れ、自動運転技術は米中2強の時代に

しかし、日本は出遅れが目立ちます。ドイツは2017年、道路交通法を改正および施行し、部分的にではありますが、限定的な自動運転技術に対応しました。一方、日本の法整備は検討段階です。

 

法整備だけではありません。技術においても日本は厳しい状況です。

 

米グーグルが自動運転に関する特許競争力で、日本勢トップのトヨタ自動車を逆転し、首位になったことが報じられました(9月13日付日経新聞)。また、世界知的所有権機関(WIPO)によれば、2017年に中国の国際特許出願数が日本を逆転して世界2位となり、さらにアメリカに迫りつつあります。

 

中国の自動運転への取り組みは非常に盛んです。中国は産業振興策である「中国製造2025」を掲げ、新・開発独裁を進めています。

 

昨年は自動運転車の走行を前提とする新都市「雄安新区」の建設を計画。北京から100キロメートルほどの農村に、東京都に匹敵する巨大都市をつくる予定です。

 

雄安では、自動運転などの大部分の交通インフラを地下に集中させ、地上は歩行者や自転車などを行き来させる計画です。自動運転の課題の1つである「予測が難しい歩行者にいかに対応するか」ということへの、中国らしい解決策と言えます。

 

7月4日には、百度(バイドゥ)が世界で初めてとなる、ハンドルも運転席もない自動運転バスの実用化を発表し、量産を進めています。

 

共産党の意思1つで物事が進む中国は、グローバル企業にとっては魅力的です。

 

前述の百度が主導する開発プロジェクトには、米フォード・モーター、独ダイムラーなどの自動車メーカーのほか、米インテル、米マイクロソフトなどのIT企業が協力しています。

また、日本の5倍以上の新車販売台数を誇る中国に対し、トヨタをはじめとする日本の自動車メーカーも関係を深めています。

 

しかし、このままでは中国に日本の技術を取られる危険性があります。また、中国では「インターネット安全法」が施行されているため、企業は中国国内から技術等のデータを持ち出せません。従って、中国に諸外国の企業が群がれば、中国のみが自動運転技術を進化させる可能性も考えられます。

 

 

早急な法整備と競争できる環境づくりを

日本の自動運転技術の遅れを取り戻すためには、少なくともドイツ並の法改正を早急に実現する必要があります。また、法の支配を無視する中国に、どうすれば技術開発競争で勝てるのか、規制緩和を含め、議論を深めていくべきでしょう。

 

アメリカでは、今年、中国などの外資による対米投資を厳しく審査する新法が成立しました。これにより、アメリカ企業の先端技術を守れるほか、インフラや不動産への投資も差し止められるようになりました。

 

また、同政府や政府機関と取引する企業が中国通信機器大手であるファーウェイやZTEの製品を使うことを禁じる法案も成立しました。

 

このようにアメリカでは、徹底して中国への技術流出を防ぐ方策を講じています。投資規制や関税などで、日本も海外への技術流出を防ぐ手立てを整備していく必要があります。

 

また、国内で企業が自動運転を進めやすい環境を整えるために、法人税の減税や規制緩和などを迅速に進めていかなければならないでしょう。

(HS政経塾 藤森智博)

 

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タグ: 自動運転  未来投資戦略  国家プロジェクト  付加価値  道路交通法  

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