中国、南沙諸島の埋め立て「軍事利用」 対中国で日本とマレーシア、じわり接近
2015.06.02
ナジブ首相(画像は、 Wikipedia より)。
南シナ海の南沙諸島で中国が進める埋め立てや滑走路の建設などについて、中国人民解放軍の上将が国際会議において、軍事利用目的であると初めて認めた。アメリカのカーター国防長官が5月末、中国に対し埋め立ての「即時中止」を申し入れ、日本とオーストラリアの防衛相も「深刻な懸念」を表明していたタイミングでの発言だ。
今回、中国の孫建国副総参謀長は、南シナ海での埋め立て続行を明確にするとともに、将来的に南シナ海に、戦闘機の緊急出動区域として各国が設定する「防空識別圏」を設定することにも含みを残した。今後、中国の戦闘機が南シナ海での緊急出動を増やし、海と空の両方で実効支配を進めていくという懸念が高まってきた。
日本とマレーシア「第二のルック・イースト政策」へ
そんな中、日本の安倍晋三首相とマレーシアのナジブ首相がこのほど会談し、両国の関係を「戦略的パートナーシップ」に格上げする趣旨を盛り込んだ共同声明を発表した。
両首脳は、今後5年で研修員500人の受け入れを目標とした「東方政策(ルック・イースト政策)第2波研修」の開始を明らかにしたほか、日本による防衛装備品の移転などの交渉を進めることで一致した。マレーシアは、東南アジア諸国の中で、日本が防衛装備協定の交渉を行う初めての国となる。
"親中国家"と目されてきたマレーシアが、日本への接近を進めているのが、中国への懸念によるものであることは言うまでもない。
経済的には、マレーシア側には、日本の投資を受け入れたいという希望がある。日本は先日、アジアのインフラ整備に今後5年間で約13兆2千億円を投じる方針を打ち出したが、ナジブ首相は自国の高速鉄道整備について、「日本の新幹線が有力候補」とラブコールを送っている。これも、中国がアジア各国へのインフラ投資によって経済依存を進めようとしていることへの対策であることが伺える。
防衛面でも、マレーシアは具体的な防衛力強化を進めている背景がある。5月初旬には、アメリカがマレーシアに対し、空対空ミサイル「AIM-120C7 AMRAAM」などの武器売却を承認。近年のマレーシアはこうした武器輸入により、急速に軍備力を拡張している。
先の会談に先立ち、一部のマスコミはナジブ首相の外交姿勢について、「父親の故・ラザク元首相は、中国との国交を樹立した人物。そのため、息子であるナジブ首相は中国寄り」と報じていた。だが、親子の関係だけで外交政策を見るべきではないことは明らかだ。
日本とマレーシアの関係が新たな段階に入ったことは、アジアの平和と繁栄に寄与する意味で歓迎すべきである。だが、いつ何時、東南アジア諸国が拡大する中国を恐れ、親中政策に傾斜するかは分からない。日本は、インフラ整備や兵器の配備などの"日本方式"をそれらの国々に広め、アジアのイニシアティブをとるべきだ。(山本慧/晴)
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