道徳の教科化、まだ踏み込みが足りない(後編)

2015.02.15

井澤一明

プロフィール

(いざわ・かずあき)1958年、静岡県生まれ。7年間で5000件以上のいじめ相談を受け、いじめ解決の専門家として各地の学校などでの講演やTV出演で活躍中。一般財団法人「いじめから子供を守ろうネットワーク」公式サイト http://mamoro.org

大津のいじめ自殺事件を契機に「道徳」の教科化が進んだ。文部科学省は、2018年度から道徳を教科として位置づけるとして、2月4日、学習指導要領の改正案を公表した。道徳の教科化でいじめを防ぐことができるのだろうか。いじめ解決の専門家である井澤一明氏の寄稿の後編をお送りする。

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ここ最近、「人を殺してみたかった」という動機で起こった殺人事件が世に衝撃を与えた。昨年、佐世保で起きた女子高校生による殺人事件、今年一月に名古屋で起きた女子大学生による殺人事件である。

これらの事件を見るにつけ、道徳教育で「死生観」についても正面から向き合わなければ、意味が無いと分かる。「生命の大切さ」や「人を殺してはいけない理由」を子供たちに教えるには、道徳を超えた「宗教的情操教育」の視点が不可欠である。

「良心に基づく行動」に必要な宗教教育

今、子育て世代に『絵本 地獄―千葉県安房郡三芳村延命寺所蔵』(風涛社)という絵本が大ヒットしている。読者から「子供が変わった」、「しつけに効果絶大」という声が相次いでいるという。「地獄」の様子という宗教的真実を知ることによって、「なぜ悪いことをしてはいけないか」という理由が、実感を伴って分かるようになるということだろう。

2006年に改定された教育基本法の第十五条で、「宗教に関する一般的な教養」の重要性がうたわれており、「道徳科」においても宗教的視点で教えることは推奨されるべきだ。それだけでなく、いじめ問題解決の鍵が「宗教教育」の中にある。

学習指導要領の改定案にあるように、道徳とは、本来「人間としての生き方」を養うためにある。人を傷つけたりいじめたり、泥棒や万引きをすることが「悪」だと教えることから逃げているなら、道徳とは言い難い。「自分のして欲しいことを人にする」「自分がいやなことは人にしない」といった、あらゆる宗教に共通する「黄金律」と呼ばれる基本的ルールを身につけさせなくてはならない。

本来、人が見ていなくても、「良心に基づく行動ができる子」を育てることは、学校教育の目的の一つのはずだ。

しかし、実際のいじめ相談の現場では、「誰が見たのか」「証拠を出せ」「やっていない」と言い張れば、逃げられると考えている加害者が多い。しかも、その親も一緒になって「証拠がないからいじめではない」と言ってはばからない。

良識ある人間を育成してゆかねば、社会は成り立ちがたい。東北の大震災における被災者の節度ある行動は世界中から称賛を受けたが、この精神を未来に引き継ぐのは、私達の責任だ。

文科省には「価値観の押しつけ」や「指導ではなく支援が必要」という声に惑わされず、未来を担う子供たちの「道徳心」を培うため、積極的に道徳教育に邁進してもらいたい。(了)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『教育の法』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=49

幸福の科学出版 『子供たちの夢、母の願い』 大川咲也加著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1347

【関連記事】

2015年2月5日付本欄 「考える道徳」でいじめは減らない 新学習指導要領案を公表

http://the-liberty.com/article.php?item_id=9166

2014年10月17日付本欄 小学校でのいじめの件数が過去最高を更新 教師は責任を持って「善悪の基準」を教えるべき

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8574


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