2015年国際政治の展望 原油価格の動きから見る各国の思惑

2015.01.03

2014年は、ここ数年まれに見る激動の年だった。2015年、年の始めに、国際政治がどのように動き、日本が世界の中でどのような選択をしていけば良いのかを見てみたい。

2014年に世界を揺るがした大きな問題は、ウクライナ問題、中東の混迷、そして中国の台頭と軍事拡張だ。しかし、見落とされがちなのが、昨年50%近くも暴落した原油価格が、これらの問題に与える影響ではないだろうか。

原油価格が暴落しても、産油大国のサウジアラビアは市場に介入して価格を支えようとしていない。サウジアラビアが発表した2015年度予算には、386億ドル(約4.6兆円)の赤字が組み込まれている。これほどの赤字を出してまで、なぜ同国は原油価格の暴落を見過ごすのだろうか。

一部の識者によると、その背景には、原油の輸出で経済を支えているイランや、シリアを支援するロシアに対して圧力をかける意図があるという。スンニ派のサウジアラビアは、シーア派のイランやシリアと仲が悪く、特にイランの核開発を警戒している。また、サウジアラビアは、アメリカのシェール革命も同時に潰し、原油市場における自国の影響力を維持したいところだ。

欧米の経済制裁と原油価格の暴落で窮地に立たされたロシアは今年、何らかの手を打ってくるだろう。経済的に中国に擦り寄るか、あるいは北方領土を日本に返還し、欧米のロシア包囲網から日本を外そうと試みるかもしれない。中国包囲網を構築したい日本としては、ロシアが中国側につくのは避けたい。ウクライナの紛争と欧米の制裁を終らせるために日本は外交努力をすべきである。これは、ウクライナに気を取られているアメリカが、東アジア情勢に集中し、「アジア回帰」を進めるためにも重要なことだ。

アメリカとイランの核交渉も今年中に結論が出ると思われる。しかし、その結論がイランの非核化につながらなければ、中東は更なる混迷の中に突き落とされるかもしれない。日本は中東の領土紛争・宗教紛争の行方に直接的な利害がないため、イラン核交渉やイスラエル・パレスチナ問題に対して公平な仲介者となり得る。同時に、国際正義という観点から、国際テロに対しては各国と連携して、断固として対抗する必要もある。

識者の間では、2015年も原油価格の低迷は続くと言われている。原油価格が、ロシアやイランの外交政策にどれほどの影響を与えるかは分からないが、その暴落が引き起こす経済低迷は、彼らの選択肢を狭めていることは確かだろう。

中国という大きな脅威にさらされている東アジアの中で、日本は今後、指導力を発揮していかなければならない。そのためには、大局的に、多方面から国際情勢を分析し、それが自国と世界にどのような影響を与えるのかを、冷静に見極める必要がある。(中)

【関連記事】

2014年12月18日付本欄 ロシア金利引き上げ効果なし プーチン氏は北方領土で勝負にでるか?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8950

2014年12月17日付本欄 「米中は衝突する」「日本は核を持て」 国際政治学の権威、ミアシャイマー教授が都内で講演

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8908

2015年1月号記事 沖縄が「中国領」になる日が近づいた - The Liberty Opinion 2

http://the-liberty.com/article.php?item_id=8757


タグ:

「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内

YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画



記事ランキング

ランキング一覧はこちら