エボラ熱対策を阻む遺体に触れる風習 「科学と両立する信仰」が感染阻止の鍵か
2014.08.17
西アフリカで、エボラ出血熱の大流行が続いている。
世界保健機関(WHO)によると、13日の時点でのエボラ熱による死者は、ナイジェリア、ギニア、リベリア、シエラレオネの各国で合計1145人となり、感染者は確認できているだけで2127人に上った。国際医療NGO「国境なき医師団」は、大流行が向こう6カ月以上にわたって続く恐れがあると警告している。
これだけの大流行が起きている原因の一つは、現地の人々の信仰観や、死者の埋葬に関する風習にあると見られる。
米ニューズウィーク誌(日本版)はこのほど、「多くの住民がエボラ熱を超自然的な病だと信じており、欧米の医療専門家に対する不信感が根強い」と報じている。エボラ熱を「呪い」ととらえる風潮があり、現地に入った海外の医療関係者が地域から追い出されたり、医療施設が襲撃を受ける事件も発生しているという。
さらには、死者の埋葬のために遺体を洗って清めるという西アフリカの風習も、問題を深刻にしている。エボラ熱は空気感染ではなく、感染者の体液に直接触れることで伝染する。そもそも、体じゅうの穴という穴から血液が噴き出す伝染病だ。遺体に素手で触れることは、重大な感染リスクを伴う。
WHOの医療調査チームに参加した、人類学者のベアリー・ヒューレット、ボニー・ヒューレットの両博士は、2000年にエボラ熱が流行したウガンダでの遺体の取り扱い方について、著書で報告している。ある村では、葬儀前に、死者の叔母が遺体を洗い、お気に入りの服装を着せる。その後に行われる葬儀は何日も続く場合もあるが、儀式の最後には、遺体の顔に触れたりキスしたりする風習があるのだという。
しかし、こうした埋葬の儀式によって、死者が死後の生活にスムーズに移行できるようになると信じている人々にとって、遺体への接触を禁止するのは死者への冒涜を意味することになる。これもまた、必死で患者を救おうとしている海外の医療関係者への不信を生む原因となってしまう。
病気についてのしっかりした知識とともに、医療も含めた現代の科学と両立するかたちの信仰観が普及することが、流行を防ぐための鍵の一つだと言えるだろう。
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