進む米国の軍事力低下 日本の集団的自衛権の行使容認は"序章"に過ぎない
2014.02.26
米国の軍事力の低下が、着々と進んでいる。米国の国防総省は24日、陸軍の兵力を現在の52万人規模から、数年で44~45万人規模に削減すると発表した。太平洋戦争前の 1940年以来の最低水準になる見通しだ。
同省は2013年以来、軍事費の強制削減に追われている。今回の陸軍の兵力削減もその一環。米国は年間の軍事費4960億ドル(約50兆円)と世界一の軍事大国だが、ここ10年間で約1兆ドル(100兆円)の削減をしなければならない。削減総額は、日本の21年分の国防予算に匹敵する。
強制削減が予定通り行われた場合、「現在11隻ある米軍の原子力空母は、8~9隻に減らされる可能性が高い」と、同省や米シンクタンクは報告している。これが現実となれば、「世界の警察官」としての米国のプレゼンスは大きく損なわれる。かつて誇った「世界の2カ所で戦争をしても勝てる軍事力」は論外。1つの戦域でしか本格的な軍事作戦が遂行できなくなるだろう。
こうした状況の中、日本にとって最大の課題となるのが、中国・人民解放軍との武力衝突の危機をいかに切り抜けるかだ。オバマ米大統領は、「アジア重視の外交」を明言しているが、現実に日中間で軍事衝突が起こった際、果たして、大統領や連邦議会が軍事介入を決断するのか。
今の日本に必要なのは、米国の変化に伴い、日本の国防が極めて危うくなりつつあるという現状を正しく理解することだ。危機感を持って、日本自らが変化しなければならない。集団的自衛権の問題は、安全保障上の喫緊の課題である。
歴史を振り返れば、第1次大戦当時、同盟国だったイギリスは、日本にヨーロッパへの派兵の要請をした。これに対し、日本は巡洋艦「明石」と駆逐艦12隻を派遣した程度だったが、米国は駆逐艦64隻、駆潜艇77隻を派遣していた。この時のイギリスの日本への失望は大きく、終戦後2年で日英同盟は廃止された。もし日英同盟が継続されていれば、太平洋戦争での米国との衝突も回避できたと言われている。
現在、米国との関係で、日本が集団的自衛権の行使をしないという事態が起これば、「日英同盟の廃止と同じ轍を踏む」ことになる可能性が高い。ましてや軍事力の低下が進む米国にとって、集団的自衛権すら行使されない偏った同盟関係を遵守する余裕などない。
しかし残念なことに、日本国内では、いまだに自民・公明の政府与党の中で、集団的自衛権の解釈の変更に向けたコンセンサスが取れていない。与党が決断せずして、国民に説明し、説得することなどできるはずがない。
25日付産経新聞の世論調査によると、集団的自衛権の行使容認に賛成するのは、全体の47.7%。保守系メディアの調査でも、まだまだ低い数字と言える。米国の軍事力低下という現実に目を向け、日本人はより一層の危機感を持つべきだ。
そしてまた、集団的自衛権の行使容認は、本来、日本が取り組むべき国防全体の見直しの"序章"に過ぎない。政府与党は、その責任をしっかりと認識し、着実に防衛法制・装備の穴を埋めていくべきである。(HS政経塾生 森國英和)
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2014年2月13日付本欄 「『立憲主義を踏みにじる安倍首相』? 憲法と国の存続とどっちが大事か」
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2014年1月号記事 「安倍首相は正々堂々と議論せよ/憲法改正や集団的自衛権 - The Liberty Opinion 3」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=6963
2013年12月号記事 2020年『盟主』日本がアジアを守る──中国封じ込めの国防戦略
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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