シリアで化学兵器使用の疑い 国際社会は"見殺し"を続けるのか

2013.08.24

内戦が続くシリアの反体制派を代表する「シリア国民連合」は、このほど、アサド大統領率いる政府軍が化学兵器を使用し、1300人以上が死亡したと発表した。政府側は逆に、反体制派が化学兵器を使用したが、その責任を政府軍になすりつけようとしていると非難している。

一方で、活動家らが撮影した現地のものとされる映像や写真は、YouTubeなどインターネット上に多数投稿された。多数の遺体が並んでいる場面や、泡を吹いて亡くなっている遺体、医師が蘇生措置を施すシーンなどがレポートされている。反体制派の主張が本当だとすれば、イラクのサダム・フセイン大統領がクルド人虐殺の際に用いた時以来の、大規模な化学兵器の使用ということになる。

世界最大の化学兵器保有国とも言われるシリアでは、内戦中のこれまでも、アサド政権側が化学兵器を使用した疑いがもたれてきた。「化学兵器使用はレッドライン(越えてはならない一線)」と警告してきたアメリカは6月、反体制派への軍事援助を行うことを表明している。

しかし、ロシアなどがアサド政権への支援を続ける一方で、アメリカの反体制派への関与は小規模なものにとどまっている。政府軍による反体制派の弾圧などでこれまでに10万人以上の死者が出ており、アメリカなどはアサド大統領の退陣を求めているが、政権交代につながる本格的な介入については及び腰が続いている。

今回の化学兵器使用疑惑に関して、フランスのファビウス外相は「国際社会の対応が必要」「軍事介入もあり得る」とテレビ出演の中で述べた。しかし肝心のアメリカについては、これまで介入を渋ってきたオバマ政権が、突如方針を転換する可能性は低いと見られる。

国際社会が"見殺し"にする形で2年半も内戦が続いているシリアでは、ロシアやイランのほか、レバノンのヒズボラもアサド政権側に加担するなど、国際戦争に発展しつつある上、反体制派にはアルカイダ系グループも紛れ込んでいる。アメリカなど国際社会が、殺戮を止め、アサド大統領を退陣させるという確固たる意志を行動で示さなければ、戦闘は今後もエスカレートしていく危険性が高い。

【関連書籍】

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【関連記事】

2013年7月12日付本欄 アサド大統領は潔く退陣を シリア内戦 戦闘拡大の恐れ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6315

2013年6月18日付本欄 米ロ首脳 シリア問題で溝埋まらず 無秩序と化すアメリカ不在の中東

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