アメリカの無人機使用の実態を国連が調査開始
2013.01.26
アメリカは非交戦国パキスタンなどで、無人飛行機を用いてテロ首謀者の暗殺を行っている。国連は24日、その巻き添えで亡くなった民間人の被害の実態を調査すると発表した。25日ネットニュースなどが報じた。
無人機はその名の通り、操縦者が搭乗せずに基地や本国など遠隔地から操作するもので、グローバルホークなどの無人偵察機や、プレデターなどの無人爆撃機が知られている。アメリカは前ブッシュ政権のころから無人機を用いてテロ首謀者などを殺害してきた。
今回、国連が問題としているのは、アメリカがパキスタンなど、法的に交戦国ではない国で無人機を用いて暗殺を実行し、民間人に被害が出ていることだ。パキスタンでは民間人1000~2000人が犠牲になったとも言われる。国連は、アメリカのこうした行為が国際法に反していないかも調べる。
国連特別報告者のベン・エマーソン氏は記者会見で「軍事および非軍事的文脈で無人機技術の利用が急増することは、従来の国際法の枠組みにとって大きな課題である」と語り、新たな法的枠組みの必要性を訴えた。調査結果は年内に報告する予定。
アメリカが無人機を重用する理由の一つとしてコストの安さが挙げられる。機体の費用は有人機に比べて50分の1~20分の1だ。また、墜落しても人的被害がない。「財政の崖」が迫っているアメリカは軍事予算を削らざるを得ないため、この流れは今後も続くと見られる。無人機用の搭載機器の世界市場は2012年におよそ39億ドルだったが、2022年には60億ドルまで成長すると言われている。
アメリカだけではない。元航空自衛隊空将の佐藤守氏によると、中国でも旧型機の「殲6」1000機を無人機に改造して爆弾を積載し、尖閣に突入させる計画が持ち上がっているという。この計画自体は実現可能性が低いが、国連がアメリカの件を問題にするのも、このまま放置しておくと、中国など他国が同様の行動をとった時、制御する根拠がなくなってしまうという理由もあるようだ。
こうした流れの中、日本は自国をどう守っていけばよいのか。安倍晋三首相は今年、防衛大綱の見直しを予定しているが、無人機を用いた戦争の時代が来つつあることを視野に入れる必要があるだろう。(居)
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2013年2月号記事 オバマの好きな無人機による暗殺が「戦争犯罪」に? - 伊藤貫のワールド・ウォッチ
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5361
2012年12月24日付本欄 JAXA大型無人飛行機の開発へ 積極的に国防に役立てるべき
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