原発再稼働問題 不毛な「安全性」議論より「リスクマネジメント」を
2012.04.25
橋下徹大阪市長が24日、松井一郎大阪府知事と共に首相官邸を訪れ、藤村修官房長官に「原発再稼働に関する8提案」を提出した。この提案は、当初「8条件」としていたものを、「府に権限がないのに、国所管の原発政策に注文をつける印象を与える」のは良くないのでは、という声が府の幹部から出たために、「提案(提言)」という柔らかい文言に変更したらしい。
橋下市長はすでに今月14日、枝野経産相が福井県知事を訪れ再稼働を申し入れたことについて、「僕は本当に怖い。政治家が“安全"なんて確認できるわけないんですから」「次の選挙の時に、もう民主党政権には代わってもらう」と発言し、現政権に"宣戦布告″をしていた。
藤村官房長官との30分間の会談の後、橋下市長は「国民の皆さんがだまされちゃいけないのは、政権が安全宣言をしたけれども、これは"安全″を確認したわけじゃない。大飯原発について(原子力安全委員会など)誰も安全のコメントを出していない状況」と、記者団に述べた。
確かに、日本にある54基の原発施設のそれぞれが、どの程度安全なのかについての情報が国民には知らされてはおらず、再び何らかの事故が起きた場合に、国としてどのように対処するのかも説明されていない。
しかし、原発事故、再稼働に関する現政権の対応のまずさを批判することと、原発の安全性の確保の問題、さらには日本のエネルギー政策の方向性などは、別個に議論すべきものではないだろうか。
人間が作り、動かす技術は、原発に限らず「100%安全・安心」ということはあり得ない。そうであれば、未曾有の大災害を経験した私たちが本当に真剣に考え、議論を尽くさなければならないのは、「原発そのものの安全性」ではなく、「万一、不測の事故が起きた場合、被害を最小限に止めるためにどうすべきか」というリスクマネジメント(危機管理)についてであろう。
日本人は、「最悪の状況を想定して物事を考える」ことを嫌う傾向があるが、科学技術の運用に関しても、政治や外交の問題に関しても、日ごろから「万が一の場合」を想定し、その対応策を考え続けておく、という訓練が必要なのではないか。(宮)
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