日本としての抑止力を真剣に考えるべき時 4月の北朝鮮の弾道ミサイル実験

2012.03.21

北朝鮮が長距離弾道ミサイル実験とみられる「人工衛星」打ち上げを予告したことを受け、日本政府はミサイル防衛システムで打ち落とす準備に入った。

北朝鮮が予告したのは4月12~16日で、防衛相が自衛隊法82条3項に基づいて命令する。北朝鮮が発射した場合、10分以内で日本近海を通るため、事前に命令を出しておく方向だ。

自衛隊は、第一段階として、海上自衛隊・イージス艦の海上配備型迎撃ミサイル(SM3)が大気圏外で迎撃。打ちもらした場合の第二段階として、航空自衛隊・地上配備の地対空誘導弾(PAC3)が、北朝鮮のミサイルが落ちてきた段階で迎撃することになる。

北朝鮮が予告した落下地点はフィリピン東方190キロの太平洋上。このため、沖縄周辺にイージス艦やPAC3を配備することになりそうだ。

予告通りであれば、弾道ミサイルは日本の領空のはるか上空を通ることになるため、迎撃措置はとられないが、予告の経路から外れた場合に迎撃されることになるという。

結局は、09年4月に同じく北朝鮮が弾道ミサイル「テポドン2号」を発射し、秋田、岩手両県の上空を通過したが、日本の領土・領海には落下せず、迎撃を見送った例のようになる可能性が高い。

ミサイル防衛をめぐっては、「本当に当たるのか?」が常に議論の的になっている。

「役に立たない」論の中心は、「地上・海上・海中・空中から同時に多数のミサイルを発射されたら、すべてを迎撃できない」という意見だ。「中国はミサイル防衛のカギであるアメリカの軍事衛星を破壊できる」という主張も有力だ。

弾道ミサイルの周りに擬似ミサイルを飛ばして、迎撃ミサイルに打ち落とさせる「おとりシステム」など、対抗手段の開発が進んでいるという情報もある。

日米双方で進めるミサイル防衛の実験は、近年では命中率が上がってはいるが、基本的には「いつ、どこで、どういう方向に発射する」という事前の"台本"がある実験だ。弾道ミサイルを撃つ国が積極的に妨害をしたり、裏をかいたりした場合は、命中率が落ちざるを得ない。

結局、日本として真剣に考えなければならないのが、「ミサイル攻撃を受けた場合、敵基地を先に叩く」という選択だ。これ自体は1956年の政府見解が容認している。現時点では自衛隊にその能力はないが、潜水艦発射の巡航ミサイルを持つなどすれば、北朝鮮や中国に対する強力な抑止力になる。

09年の北朝鮮のミサイル発射の際には、アメリカの国防次官補が「日本が敵基地攻撃能力の獲得を決めれば、アメリカは当然できる限りの方法で支持する」と述べていた。要は、日本の決断次第だ。

今回の北朝鮮の弾道ミサイル発射を機に、この敵基地攻撃能力についての議論が進むことを期待したい。消費税増税問題などよりも、はるかに重要なテーマだろう。(織)

【関連記事】

2009年8月号記事 北朝鮮の核ミサイルから日本を守れ

http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=642


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