こんな内閣が存在してくれたら……2年前の小説『史上最強の内閣』再読
2012.03.18
北朝鮮が4月に長距離弾道ミサイルの打ち上げを予告しているが、これとよく似た場面から始まる小説が2010年に発刊され、ベストセラーになっていた。『史上最強の内閣』(室積光・小学館)である。
作中では、北朝鮮が日本向け中距離弾道核ミサイルの発射準備に入る。日本海に緊張が高まる中、自民党ならぬ「自由民権党」の、麻生ならぬ「浅尾総理」が緊急記者会見を開く。
政界はもう「人材払底していましてね」と語る浅尾は、次の選挙で民主党ならぬ「民権党」が政権を握る可能性がある微妙な時期に、政権を投げ出してしまう。そして、誰も知らなかった京都出身の二条友麿率いる「影の内閣」に日本の舵取りを任せるのであった。
二条内閣の政策は何か。「ゆとり教育の逆」をいくのが、新門文部科学相。円高は「デメリットだけやない」と説くのは浪速財務大臣だ。
広島出身の山本防衛相は、「われわれは国民の生命財産を守るのが仕事じゃけ、攻撃には反撃します」と明言。二条首相は「社倫党はんはあちらの労働党はんとも仲ええんでしょう? ならあちらにも(憲法)九条持つように勧めてくれたらええんですわ」と、社倫党の護憲論に切り返しながら、国難回避に向けて必要な手を次々と打っていく。
もちろん、本書はフィクションであり「実在の組織個人とは関わりのないことを明記します」とことわってある。だが、本書の帯には「こんな内閣が存在してくれたら……」「ただのエンタテインメントではない」との読者の声が記されている。
増税しか頭にないドジョウ宰相、経済のことが何もわからない素人財務大臣にうんざりさせられている私たちにとって、「どうやったら二条内閣のような人材を選ぶことができるのか」という作中人物の問いは他人事ではない。
救国の実力を秘めた「シャドーキャビネット(影の内閣)」がどこかに存在し、現実の内閣に入ってくれることを期待したくなる。(賀)
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