南アジアの要衝に忍び寄る「静かなる攻勢」とバングラデシュの選択【チャイナリスクの死角】

2026.02.07

バングラデシュの国会議事堂(画像:Karl Ernst Roehl/Wikipedia)

 

国際政治学者

佐久間 拓真

(ペンネーム)
国際政治の中でも特に米中関係、インド太平洋の安全保障、中国情勢を専門にし、この分野で講演や執筆活動、現地調査などを行う。

南アジアの地政学的な要衝であるバングラデシュが、中国の経済的影響力の拡大、いわゆる「経済的侵略」とも称される戦略的投資の渦中に置かれている。

かつて貧困国からの脱却を象徴したこの国は、現在、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」の重要なパズルの一片となっている。中国による支援は、インフラの近代化という輝かしい側面を持つ一方で、その裏側には国家の主権や安全保障を揺るがしかねない巧妙な経済的依存の構造が隠されている。

橋や発電所のみならずメディアやシンクタンクにも

中国によるバングラデシュへのアプローチは、圧倒的な資金力に基づいたインフラ投資から始まった。パドマ橋鉄道連結事業やパイラ火力発電所といった数千億円規模の巨大プロジェクトは、バングラデシュの経済成長を支える基盤として歓迎されてきた。

しかし、これらの資金供給の多くは低利の援助ではなく、商務ベースの融資に近い形で行われている。これが、他国でも見られる「債務の罠」への懸念を呼び起こしている。返済能力を超えた巨額の債務が積み重なれば、いざ返済が滞った際に、港湾施設や軍事拠点といった重要資産の運営権を中国側に譲渡せざるを得なくなるリスクがあるためだ。

経済的な浸透は、物理的なインフラに留まらない。中国はバングラデシュのメディアや教育機関、シンクタンクに対しても積極的にアプローチを強めている。親中派の世論形成を促すためのソフトパワー外交が展開され、現地の学術交流や情報流通の現場において、中国側のナラティブが浸透しつつある。これは、単なる経済的協力という枠組みを超え、バングラデシュの国家的意思決定そのものに影響を及ぼそうとする「構造的な関与」であると指摘せざるを得ない。

政権交代の混乱につけこむ中国

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タグ: 経済的侵略  佐久間拓真  チャイナリスクの死角  債務の罠  バングラデシュ  一帯一路  軍事拠点 

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