EUがロシア凍結資産活用に失敗するも、ウクライナ支援を強引に継続 ─ 次は高市政権がウクライナに金を出すか、岐路に立たされる
2025.12.20
《ニュース》
欧州連合(EU)は18~19日に開かれた首脳会議で、ウクライナに対し今後2年間、900億ユーロ(約16.4兆円)を無利子で融資することを決定しました。ただ、ロシア凍結資産を賠償として活用する当初の案が打ち砕かれ、EU内の分裂が際立っています。
《詳細》
首脳会議では約15時間を超える議論の末、支援に反対したハンガリー、スロバキア、チェコを除く24カ国が、共同で市場から資金を借り、ウクライナに900億ユーロを融資することで決まりました。これは、ウクライナが2026年から27年にかけて必要と見積もる約1370億ユーロの資金のうち、3分の2に相当します。
当初は、EU域内にある2100億ユーロ相当の「ロシアの凍結資産」を担保に資金を借り入れ、ウクライナに融資する案でしたが、今回は合意に至りませんでした。
凍結資産の利用については、EUのウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長が9月、2025年一般教書演説の中で、「凍結されたロシア資産に基づいてウクライナ戦費を賄うための新たな解決策に取り組む必要がある」と表明し、賠償融資の構想が本格化。ただ、ロシアの凍結資産を利用することは国際法に抵触しかねない"強引な荒業"です。ウクライナ戦争の「支援疲れ」が広まる中、ドイツなどは一部加盟国の反対を押し切り、強行突破を決断したと見られます。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、早ければ2026年にも400億~450億ユーロを受け取って武器購入に充てたいとし、「凍結資産を活用する以外の代替策はない」などと窮状を訴えていましたが、凍結資産の利用はロシアを大いに刺激し、せっかく歩みを見せている和平への機運に水を差すことになるため、アメリカやイタリア、ハンガリーなどが反対しました。
また、EU内にあるロシア凍結資産の8割以上を保管するベルギーも、対露制裁が解除された場合に、ロシア資産の返還が求められる可能性があることに加え、ロシアが報復措置として訴訟を起こし、多額の損害賠償が発生するリスクがあるとして反対してきました。
こうした議論が紛糾した結果、今回の首脳会議では、凍結資産の活用を断念しました。ただ、「将来、ウクライナがロシアから受け取った賠償金を返済に充てる」「ロシアが賠償金を支払わない場合は凍結資産から返済し、ウクライナには返済義務が生じない仕組みを目指す」として、引き続き凍結資産の活用を検討する構えを示しています。
《どう見るか》
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