大炎上した中国大阪総領事の不適切な発言【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2025.11.24
アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
高市早苗首相は11月7日、国会で、台湾で緊急事態が発生した場合、「存立危機事態」にあたる可能性があると表明した(*1)。「存立危機事態」とは、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態をいう。
高市首相は、その際、日本が「集団的自衛権」を行使する可能性を排除しないとの見解を示した。これは2015年に日本が制定した「事態対処法」──日本と密接な関係にある国が攻撃を受けた場合──に由来している。たとえ日本が直接武力攻撃を受けていなくても、特定の状況下であれば、首相が自衛隊を動員し「限定的な集団的自衛権」の行使が可能になる。
今回の答弁は、台湾海峡で紛争が発生した場合、日本が何らかの軍事行動を取る可能性を示唆したとして、中国側の強い不満を招いた。
翌8日、中国駐大阪総領事の薛剣(せつ・けん)はSNSで「勝手に突っ込んできたその汚い首は、一瞬の躊躇もなく斬ってやるしかない」と投稿した。典型的な「戦狼外交」である。
この発言は日本の国民から強い反発を招き、薛剣の主張には「高市首相への殺害予告と解釈され、極めて悪質だ」と批判が殺到した。
木原稔内閣官房長官は11月10日、薛剣が「度重なる不適切な発言」を行ったとして、日本側は中国に対し適切な措置を講じるよう繰り返し求めたと表明した。
米在日大使ジョージ・グラスもXに投稿し、薛剣の発言は高市首相や日本国民に対する脅威だと指摘し、「仮面が再び剥がれた」と記した(投稿は後に削除)。
13日、わずか2時間の内に日中間で各々の大使「召喚」が行われた。お互いの国が、ほぼ同時期に相手国の大使を呼び出すのは珍しい。
中国外交部や国務院台湾事務弁公室などが高市批判をしたのに続き、14日深夜には、中国外交部が自国民に対し、「今後、日本への渡航を避ける」よう注意喚起した。若者の日本留学さえも再考せよと勧めている。
(*1)11月10日付DW
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