100m走に青春を賭けた若きスプリンターたちの情熱と人生哲学を描いたアニメ『ひゃくえむ。』
2025.10.12
全国公開中
《本記事のポイント》
- 道を究めんとする者たちのストイシズム
- 「なぜ走るのか」という哲学が持つ"見えない力"
- 自分も他人も生かす道としての中道
「チ。 地球の運動について」で知られる漫画家・魚豊(うおとう)氏の連載デビュー作で、陸上競技の世界で「100m走」に魅せられた者たちの人生と哲学を描いた漫画「ひゃくえむ。」をアニメーション映画化。
生まれつき足が速く、友達も居場所も当たり前のように手に入れてきた小学6年生のトガシと、つらい現実を忘れるためがむしゃらに走り続けていた転校生の小宮。トガシは「たいていのことは、100mだけ誰よりも速ければ全部解決する」という自分の哲学を小宮に教え、放課後に2人で練習を重ねていく。打ち込めるものを見つけた小宮も貪欲に記録を追うようになり、いつしか2人は100m走を通じてライバルとも親友ともいえる関係となる。
その後、幾度もの挫折を得て、日本を代表するトップアスリートとなった2人。日本選手権決勝を迎え、トガシは小宮に教えた自らの競技哲学の帰結を知ることになる。
松坂桃李がトガシ、染谷将太が小宮の声をそれぞれ演じ、共演には内山昂輝、津田健次郎、高橋李依、種﨑敦美、悠木碧ら豪華声優陣が集結。
道を究めんとする者たちのストイシズム
この映画の特徴は、100m走で日本の頂点を極めようとする若きトップアスリートたちが持つ"ストイックな情熱"を存分に描いているところだ。
主人公のトガシは、小学6年生の時から全国大会で優勝し、陸上界から注目される存在となる。その中で、「たいていのことは、100mだけ誰よりも速ければ全部解決する」という人生哲学を持つに至り、その哲学の具現化として、極めてストイックな生活を続けていく。
また、この哲学を教えられた同級生の小宮も、最高記録に近づき、突破することに人生の全てをかけ、無駄なものを削ぎ落とした生活を10年以上も続けていく。
この哲学の正しさはともかくとして、2人やそのライバルたちが送っているストイックな生活は、とても清々しく、一途に道を究めようとする男たちの美しさが感じられる。
それは、スポーツマンというよりは、哲学者や宗教家にも似ていて、仏教の求道者を思い起こさせる。
本来の仏教修行には厳しい戒律が伴い、特に菩薩と呼ばれる高い悟りの境地に達するためには、「六波羅蜜多(ろくはらみた)」と呼ばれる修行があり、その中には「持戒波羅蜜多(じかいはらみた)」と呼ばれる戒律の修行がある。
この修行について、大川隆法・幸福の科学総裁は著書『釈迦の本心』の中で「ストイシズムの復権」として、その現代的な意義を次のように指摘している。
「『持戒波羅蜜多』の精神を現代に生かすとするならば、『ストイシズムの復権』ということになるでしょう。『みずからの生活を単純化し、シンプルで平坦ななかに、知的なものや精神的なものを求めていく』というストイックな生き方、ストイシズムのなかに、『持戒波羅蜜多』の生き方がありうると思います
高い目標を持ち、道に精進している人にとっては、人生のつまらない飾りは余計なものなのです。したがって、自分のいちばんやりたいこと、自分の本業と思えることに全力を投入し、それ以外のものへの関心は淡白であるという生き方が、現代的ストイシズムであると解釈できるでしょう」
本作に登場するアスリートたちは、「何のために走るのか」を突き詰めて考える中で、自らの競技哲学を磨き上げ、体現し、饒舌に語る。そこには、従来のスポ根性ものにはない、別次元の面白さがあり、この物語を豊かにしていると言えるだろう。
「なぜ走るのか」という哲学が持つ"見えない力"
トガシは競技人生の危機を何回かくぐり抜けながら、社会人となった後もアスリートとして競技を続けてはいるが、成績は伸び悩み、大きな壁にぶつかっている。
そこに登場するのが同じ実業団に所属する年上のトップアスリート海棠(かいどう)だ。懇親会で、トガシは虚心坦懐に海棠にアドバイスを乞う。
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