価値観の罠シリーズ 第7回 「社会統計に潜む罠」

2025.08.17

《本記事のポイント》

  • 社会統計の何が問題なのか
  • ブロードリスニングとは何か
  • 社会統計の嘘を見抜く洞察力

今回は、前回取り上げた「世論操作の罠」の中で、十分説明し切れていなかった社会統計に関するテーマを取り上げ、その中にどのような罠が潜んでいるのかを、一緒に考えてみましょう。

社会統計による印象操作は可能

世の中には、数多くの社会統計データの類が存在しています。公の機関から、しっかりと調査分析され、統計学的な見地から正しい根拠だと判定されるデータの数々は、多くの場合、説得力があり、統計学が最強の学問だと言われる大きな要因にもなっています。

ただし、そうは言ってもそれぞれの分野において、あらかじめ自説に基づく結論を証明する時に、自説にとって都合の良い統計データばかりを引用し、合理化を測る目的で印象操作することも十分可能です。

捏造されたデータであるなら、はじめから論外ですが、「群盲象を撫でる」の譬えのように、事実の一側面を示すものであるなら簡単に否定はできないわけです。

信頼できる社会統計とは

では、従来の社会統計が本当に信頼できる統計なのか、信頼性に疑義のある統計なのか、その信頼性を左右する要因にはどのようなものがあるかをみていきましょう。

問題となるのは「調査方法」です。それが法に基づく設計によるものなのか、調査対象の全数調査なのか、無作為抽出のような条件を満たしているかがポイントとなります。

インターネット上のモニター等、恣意的なサンプルや調査対象の範囲の問題があります。また、その調査の中立性も問われます。政府や第三者機関が調査の主体なのか、ある特定の業界団体や利害当事者による調査なのかによっても当然結果は変わります。そして回答率が高いか低いか、母数の量でも統計の信頼度は変わります。

さらに、そもそもの「質問設計」の問題があります。質問の定義に曖昧さを含み、誘導的な質問であるかどうかには注意が必要です。質問次第で出てきた数字による印象操作が可能になります。「数字が出ているから客観的」とは限らないわけです。

たとえば、よくあるのが民間調査会社による「都道府県魅力度ランキング」や報道機関による「現代の若者の◯◯離れ」記事の類は、先ほどの問題点である調査対象の選び方や質問の設計が恣意的であったり、サンプル数が少なかったりします。したがって統計調査の形式は取っていますが、実態はイメージ調査でしかない場合があり、極端な都道府県のイメージ格差を蔓延させてしまったり、間違った若者像を提示していたりしている可能性もあります。

洞察までAIに譲るな

そこで、着目したいのが、最近の「ブロードリスニング」という調査方法です。SNS、Googleフォーラム、対面での聞き取りなどの多様な情報源から、アンケートの自由記述欄まで含む膨大な意見を集約し、AI(人工知能)を活用して、分類、分析し、世論を可視化していく手法です。いわゆる時代の空気として、どのような物の見方、考え方が世に蔓延しているのかを視覚化するというものです。

従来のような世論調査という名で集めた社会統計データによる世論操作、印象操作はまだまだ続くでしょう。ただしその時にこのブロードリスニング手法によって、可視化された世論から、どのような洞察を加えるかまでAIに頼り切るのは危険です。

人間の直感力には、霊的な洞察力もあると言われています。コンピューター的な頭に近づけば、神に近づくわけではありません。公開されている信頼のおける各種の世論調査データを元に、どのように世論を読み解いていけば良いのか、世論を誘導するための扇動的な情報や極端なアジテートによって不和雷同することのないように、日々更新されるWebリバティ上にある過去記事を参考にするなどして、冷静な判断ができるよう注意していきたいものです。

「価値観の罠シリーズ」は今回で終了とさせていただきます。次回からは、異なる切り口で展開して参ります。乞うご期待。

(吉崎富士夫)

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タグ: 世論操作  印象操作  価値観の罠  インターネット  AI  ブロードリスニング  社会統計  世論調査 

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