70年代末に韓国で起きた、全斗煥将軍による軍事クーデターを題材にして、善と悪との手に汗握る攻防戦を描いた映画「ソウルの春」【高間智生氏寄稿】

2024.08.28

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《本記事のポイント》

  • 無私なる正義を貫き通した者が最終的に手にする「勝利」とは
  • 真実の善悪を決める「神の正義」

1979年10月26日、独裁者とも言われた大韓民国・朴正熙大統領が、自らの側近に暗殺された。国中に衝撃が走るとともに、民主化を期待する国民の声は日に日に高まってゆく。しかし、暗殺事件の合同捜査本部長に就任したチョン・ドゥグァン(全斗煥)保安司令官は、陸軍内の秘密組織"ハナ会"の将校たちを率い、新たな独裁者として君臨すべく、同年12月12日に軍事反乱を決行する。

一方、高潔な軍人として知られる首都警備司令官イ・テシンは、部下の中にハナ会のメンバーが潜むという圧倒的に不利な状況の中、自らの軍人としての信念に基づき"反逆者"チョン・ドゥグァンの暴走を食い止めるべく立ち上がる。

韓国国民の4人に1人が劇場に足を運び、1300万人以上の観客動員を記録。コロナ禍以降の劇場公開作品としてナンバー1(2024年3月末日現在)となる歴代級のメガヒットとなった、史実に基づく現代史ドラマ。

無私なる正義を貫き通した者が最終的に手にする「勝利」とは

注目したいのは、圧倒的に不利な状況に置かれながらも、反逆者から国を守るべく、あらゆる手段を講じて反乱を鎮圧しようと奮戦する首都警備司令官イ・テシンの高潔な姿である。

反乱軍側が、自らの息のかかった第二空挺部隊をソウル市内に展開させようとするのに対して、鎮圧軍を率いるイ・テシンが、漢江に架かるすべての橋を封鎖し、最後に残った軍管理の橋の封鎖のため、単身自ら乗り込むところは圧巻だ。

イ・テシンの捨て身の説得により、第二空挺団は橋を渡ることができず、撤退を余儀なくされる。その間を突いて、別の空挺部隊がソウルに入り、反乱は鎮圧されたかに見えた。

しかし、チョン・ドゥグァンの狡猾な策略により、最終的に第二空挺部隊がソウルに展開、イ・テシンは孤立無縁のまま反乱軍に拘束され、軍事クーデターが成功してしまう。

歴史的には、権力を握ったチョン・ドゥグァンはこの後、光州における民衆のデモを、軍部隊を投入して武力弾圧(光州事件)。自ら大統領となり、政治的基盤を固めていくことになる。

一方、首都警備司令官イ・テシンのモデルとされるチャン・テワン(張泰玩)は退役させられ、2年間近く自宅に監禁される。その間、ソウル大学の学生だった息子が自殺するなど、苦難の人生を歩んだという。

一方、クーデターを起こしたチョン・ドゥグァンも1988年に大統領を退任した後、95年に内乱罪で拘束され、翌年死刑判決が下された。97年に特赦で減刑されて、刑の執行は停止されたものの、2021年の死去の際には、大統領としては異例の家族葬となり、埋葬地も決められずにいるとされる。

本映画が描く通り、正しさを貫き通し、多くの人々の幸せを願って苦難の人生を歩んだとしても、生きている間にそれが正当に評価されるとは限らない。むしろ、悪の勢力が隆盛を極め、この世の栄華を謳歌することも多いだろう。

その理由として、本当の世界とは、「あの世」の霊的世界であって、我々は、この世に"魂の修行"のために一時的に肉体に宿って生存しているという真実がある。私たちは、地上の人生の中で、「悪との戦い」を通じて、魂を磨いている。つまり、悪の勢力とは、"必要悪"として、一時的にその存在を許されているに過ぎないのだ。

そして、イ・テシンのように、無私なる勇気を貫き通した者には、来世で必ず、その"代償"が約束されている。大川隆法・幸福の科学総裁の著書『勇気の法』に収められた法話「真実の人生を生き切れ」には、この世とあの世を貫く"代償の法則"について、以下のように書かれている。

この世的なものに執着した者は、その"重み"で沈んでいきます。しかし、この世的なものに執着しないで、霊的な目で見、天国的な目で見、あの世の目から、仏や神の目から見て、人生を生きた人は、必ず仏や神のそば近くに座れるようになっているのです。これが代償の法則の最大のものです。どうか、これを記憶しておいてください

真実の善悪を決める「神の正義」

この映画は、「いったん敗れたかに見えた正義も、多くの人々の幸せを願った真実のものであるならば、いつか必ずその正当性が認められる」という、信念の下に作られているようにも見える。

それは、歴史的な勝ち負けを超えた、神の眼から見た正義とも言えるだろう。そしてその信念が多くの韓国国民の琴線に触れ、1千万人以上が観るという空前の大ヒットにもなったのだろう。

「神の正義」とは、「神の心」そのものであり、信仰心ある世界の大多数の人々が求めて止まないものである。

世界の多数の人々の心は、『神のお心がどこにあるかという意味での正義』を求めています。しかし、日本人の正義はそうではありません。人間がつくったものの正義であります。人間がつくった制度のなかの正義であり、人間がつくった憲法や法律の枠組みのなかの正義であります。ここに大きな隔たりがあるということを知っていないと、私たちは『現代』という時代に生きておりながら、世界の流れを読み違えることになります」(『大川隆法 初期重要講演集 ベストセレクション(6)』)

この地上世界で、さまざまな形で繰り広げられている"善悪の戦い"。そのリアルな現実を、軍事クーデターをめぐる攻防戦として描いた本作は、重厚な韓国現代史ドラマとして楽しめるだけでなく、この世とあの世を支配する「神の正義」のあり方について、考えを巡らせるヒントを提供してくれるだろう。

 

『ソウルの春』

【公開日】
全国公開中
【スタッフ】
監督:キム・ソンス
【キャスト】
出演:ファン・ジョンミン チョン・ウソンほか
【配給等】
配給:クロックワークス
【その他】
2023年製作 | 142分 | 韓国

公式サイト https://klockworx-asia.com/seoul/

【関連書籍】

『勇気の法』

大川隆法著 幸福の科学出版

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『大川隆法 初期重要講演集 ベストセレクション(6)』

大川隆法著 幸福の科学出版

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【高間智生氏寄稿】映画レビュー

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タグ: 高間智生  朴正熙  キム・ソンス  ファン・ジョンミン  反乱軍  ソウルの春  全斗煥  クーデター  韓国 

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