「ぼくは君たちを憎まないことにした」 - ザ・リバティ Pick Up Movie
2023.10.29
© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion
2023年12月号記事
Pick Up Movie
編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。
「ぼくは君たちを憎まないことにした」
11月10日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー
愛する心は、この世界の憎しみよりも強い
- 【スタッフ】
- 監督・脚本:キリアン・リートホーフ『陽だまりハウスでマラソンを』
- 【原作】
- 「ぼくは君たちを憎まないことにした」
- 【キャスト】
- 出演:ピエール・ドゥラドンシャン、カメリア・ジョルダーナ ほか
- 【配給等】
- 配給:アルバトロス・フィルム
© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion
【レビュー】
2015年に起きたパリ同時多発テロ。著者アントワーヌ・レリスが、テロ発生から2週間の自らの心の変遷を綴った世界的ベストセラー小説を映画化したのが本作である。
2015年11月13日金曜日の夜。パリ中心部の劇場で開催されたライブ・コンサートに、重武装の男3人が侵入する。1500人の観客に銃を乱射し、"ホラー映画以上"の惨劇を引き起こした。少し前には、仏対独の親善試合が行われていたパリ郊外のサッカースタジアムや、周辺のレストランで自爆テロが起きている。いずれも過激派組織「ISIL」によるものだった。
劇場にはアントワーヌの妻エレーヌと彼の友人がいた。安否の確認すらできない混乱と憔悴の中、ニュースは死者120人、そのうち劇場では80人と伝えている。事件後も続く“日常"の中、彼は1歳半になる息子の世話を通して必死に自分を保とうとする。
そして、テロから3日目の朝を迎え、妻の遺体と対面した。涙がこぼれながらも心は意外なほど落ち着き、その日、彼は溢れ出るままにテロリスト宛てに"手紙"を打つが……。
Facebookにアップされたこの"手紙"は、憎しみの連鎖を断ち、"息子が幸せで自由な一生を送る"ための決意として書かれたものだ。そして、神の心を傷つけるテロリストの"無知"に対して放たれた、反撃の言葉でもある。多くの人々の共感を呼び、3日間で20万人以上にシェアされ、仏ル・モンド紙の一面を飾り、各国から反響が寄せられている。
本人自身は、気高い言葉の重みと激しい悲しみに何度も崩れかけている。しかし、息子が世界の良い面を見失う人生を歩まないようにと、テロが"望んでいる"暗い心と戦い、必死に自分を律していく。そこに、愛する心は、究極的に憎しみよりも強いことを示そうとするメッセージが見えてくる。
© 2022 Komplizen Film Haut et Court Frakas Productions TOBIS / Erfttal Film und Fernsehproduktion
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「ぼくは君たちを憎まないことにした」
(星3.5。満点は5つ)
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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