「雨月物語」 - リバティWeb シネマレビュー Pick Up Movie
2023.04.28
2023年6月号記事
Pick Up Movie
編集部がオススメする「今こそ観たい」映像作品。
「雨月物語」
1953年
『雨月物語 4Kデジタル復元版 Blu-ray』
価格 Blu-ray ¥5,280(税込)
発売・販売元 KADOKAWA
幽玄で圧倒的な映像美で迫る怪異の傑作
- 【監督】
- 溝口健二
- 【原作】
- 上田秋成
- 【キャスト】
- 出演:京マチ子、水戸光子、田中絹代、森雅之、小沢栄(小沢栄太郎)、青山杉作、羅門光三郎ほか
【レビュー】
戦国時代、琵琶湖北岸の村で暮らす貧農の源十郎とその妻・宮木は、陶器作りで生計を立てていた。秀吉軍のもとで賑わう町の噂を聞いた源十郎は、侍としての立身出世を夢見る義弟の藤兵衛とともに、その町で大儲けする。しかし、村名主が「どさくさに紛れて儲けた金は身を滅ぼす」と諌め、妻も身の破滅を案じるが、源十郎は気にも留めない。
やがて、敵方の軍勢が攻めてきたため、源十郎と藤兵衛の一家は船で対岸の大溝へ向かう。そこでも陶器が飛ぶように売れ、分け前を手にした藤兵衛は妻の元を逃げ出し、武具を買って姿をくらます。
一方、源十郎は、買い取った品を屋敷に届けるようにと美しい姫から言付かったが、たどり着いた先は廃墟同然の武家屋敷であった。しかし、廊下を進むにつれ、屋敷はかつての豪華さを取り戻し、女中たちも現われ、大変なもてなしを受けることになる。姫は源十郎の品を高く評価し、この屋敷に住んで、その腕を振るってほしいと懇願した。源十郎も姫の妖艶さに魅入られ、妻子がいることを隠し、その申し出を受け入れるが……。
江戸時代の作家・上田秋成の怪異小説『雨月物語』の二篇を元にした、世界的評価の高い傑作。お金や出世へのごく平凡な望みでさえ、分を超えれば破滅の罠が見えなくなり、身の丈に合った生活での堅実な努力が本当の幸せをもたらす。現代でも大切な普遍的人生観が、見事なモノクロームと、幽玄で圧倒的な映像美ともに迫ってくる。名優から脇役に至るまで、非常に隙のない演技も見どころ。
ザ・リバティWeb シネマレビュー
「雨月物語」
(星4つ。満点は5つ)
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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