北京市等のコロナ蔓延を隠蔽していた習政権【澁谷司──中国包囲網の現在地】
2022.12.26
《本記事のポイント》
- 「ゼロコロナ緩和→大流行」の違和感
- 大流行を党大会前から隠蔽していた
- 死者も多数で火葬場も過密状態か?
2022年12月、中国の北京市をはじめとする大都市で新型コロナウィルスの再流行が始まった。
第3期目に突入した習近平政権は11月26日から開始された「白紙革命」を受け、「ゼロコロナ政策」を若干緩和した。さらに12月7日、北京政府は「ゼロコロナ政策」を大幅に緩和している。
厳しいPCR検査やロックダウンが緩やかになり、人々の移動や活動が多少活発になったかもしれない。そのせいで、12月中旬頃から、北京市等の大都市でコロナが蔓延したのだと思われた。
「ゼロコロナ緩和→大流行」の違和感
けれども、はたして、それほど短期間でコロナが流行するだろうか。
一般的に、オミクロン株は、潜伏期間は約3日程度だと言われる(*1)。また、感染した場合、約1週間でほぼ間違いなく発症するという。
だからと言って、「白紙革命」や「コロナ規制緩和」から1、2週間も経たないのに、大都市でコロナが大流行するとは考えにくい。中国での、突然のコロナ蔓延に違和感を覚えた方も少なくないのではないだろうか。
大流行を党大会前から隠蔽していた
実は、12月14日、世界保健機関(WHO)が中国のコロナ拡大と「ゼロコロナ政策」緩和とは"無関係"だと断言している(*2)。WHOは以前から、中国共産党の「ゼロコロナ政策」に疑問を呈し、「コロナとの共存」を主張していたのである。それにもかかわらず、習近平政権は同政策に固執した。
同日、米ホワイトハウスはコロナ感染が急拡大する中国から要請があれば、支援する用意があると表明した(*3)。そして、カービー国家安全保障担当報道官は、「我々は中国が受け入れ可能ないかなる方法でも支援する用意がある、と明言してきた。パンデミックが猛威を振るっていた当時もそうだったし、現在もそうだ」と語っている(ただし、依然、中国からの支援要請はないという)。
また同日、中国政府の衛生担当幹部は、国内の医療機関に発熱外来を4万7000カ所以上開設したと明らかにした(*4)。今後、感染予防より治療を重視する方針に基づき、医療体制の整備を進めるという。
ところで、WHOが鋭く指摘したように、「白紙革命」と「ゼロコロナ政策」が無関係ならば、なぜ中国の大都市でコロナが再流行したのだろうか。
ひょっとして、10月に、北京市内ではすでにコロナが蔓延していたのではないか。だが中国共産党は、第20回党大会(16日~22日)開催を強行するため、それを隠蔽したとも考えられる(*5)。
確かに党大会は、何とか無事終了した(最終日、胡錦濤前主席の退場というハプニングがあったが)。しかし習近平政権は、目前の医療体制崩壊を無視して、党大会開催を最優先したのである。
死者も多数で火葬場も過密状態か?
中国共産党幹部が匿名を条件に語ったところによれば、党大会前から北京市内では、医療機関で感染が拡大し、多くの医療関係者や高齢者が感染して、多数の死者が出ていたという。
「ラジオ・フリー・アジア(RFA)」は北京の十数の葬儀場に現在の状況を問い合わせたが、ほとんど過密状態だった。一部の火葬を来年1月まで延期しなければならないということを確認している。
他方、たった1日(12月17日)で約2700人の方が「コロナ死」したという情報もある(*6)。この有様は、2020年初春、武漢市で起きていた状況に酷似していないか。
今年12月16日、英BBC特派員ステファン・マクドネル氏は、北京市のコロナ流行に関して「過去10日間で2000万人中、4分の3がコロナに感染したと感じている」とツイートした(*7)。さらに同記者は、「大多数の人にとって、コロナ流行の終了は通常の生活に戻ることを意味するが、ワクチンを接種していない高齢者は今後、危険にさらされるだろう」と指摘した。
それにしても、中国共産党が、人命を顧みず、党大会を優先させ、首都や大都市を危険な状態に放置した責任は大きいだろう。近いうちに、習近平政権は、この代償を払う日が来るのではないだろうか。
(*1)国立感染症研究所
(*2)12月15日付時事通信
(*3)12月15日付ロイター通信
(*4)12月16日付読売新聞オンライン
(*5)12月19日付中国瞭望
(*6)12月18日付ラジオ・フリー・アジア
(*7)12月19日付鏡週刊
アジア太平洋交流学会会長・目白大学大学院講師
澁谷 司
(しぶや・つかさ)1953年、東京生まれ。東京外国語大学中国語学科卒。東京外国語大学大学院「地域研究」研究科修了。関東学院大学、亜細亜大学、青山学院大学、東京外国語大学などで非常勤講師を歴任。2004年夏~05年夏にかけて台湾の明道管理学院(現・明道大学)で教鞭をとる。11年4月~14年3月まで拓殖大学海外事情研究所附属華僑研究センター長。20年3月まで、拓殖大学海外事情研究所教授。著書に『人が死滅する中国汚染大陸 超複合汚染の恐怖』(経済界)、『2017年から始まる! 「砂上の中華帝国」大崩壊』(電波社)など。
【関連動画】
澁谷司の中国カフェ(YouTube)
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「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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