議員歳費の自主返納案が参議院で可決 与党は増税しても、身を切らない
2019.06.07
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《本記事のポイント》
- 与党は、消費増税を進める一方で、身を切る改革を行わず
- 自民の公約には「公務員総人件費2兆円削減」とあったが、公務員の給与は増加
- 党派やイデオロギーを超えて、消費増税に反対すべき
与党は10月に消費増税を行う予定だ。国民に負担をお願いする形だが、自らの身を切る気はないようだ。
参議院の定数増に伴い、参議院議員の歳費を削減する与党提出の国会議員歳費法改正案が5日、参院本会議で可決された。
同法案は、参院議員が1人あたり月額7万7000円を目安に、3年間に限って自主的に国庫に返納できるというもの。1票の格差を是正する目的で、昨年成立した改正公職選挙法により、議員定数は6人増え、費用は約31億円増大した。今回の法案は経費増大への対応策となる。
しかし、改正案に対しては「国民をないがしろにしている」という批判が巻き起こっている。議員は、歳費の返納が義務づけられているわけではない。仮に全議員が行っても、年間約2億円の削減にしかならず、しかも3年間という期限付きだ。
もし、赤字会社のコスト削減案として、31億円の経費が増えるのに、2億円の経費を3年間だけ減らすというアイデアが採用されれば、誰もが経営感覚を疑うだろう。しかし、それがなぜか、法案を提出した与党の考えでは許されているのだ。
自民の公約だった公務員人件費の削減はどこへ?
このような誤魔化しは、まだ可愛い方かもしれない。もともと自民党は、旧・民主党から政権を奪還した2012年の公約として、公務員総人件費2兆円の削減を掲げていた。マニュフェストにはこうある。
「わが国の厳しい財政状況に鑑み、5年間の『集中財政再建期間』において、将来の国家像を見据え、計画性を持ちつつ、国・地方を含め幅広に公務員等の給与を削減すること等により、公務員総人件費を国・地方合わせて年間2兆円削減します」
安倍政権は長期政権となり、国会では3分の2以上の議席を有しているのに、一向に実行に移さない。むしろ、公務員の給与は5年連続で増え、堂々と公約を破っている。そうした中で、議員定数を増やして増税を強いるやり方は、国民軽視と批判されても仕方がないだろう。
本誌・本欄では、消費増税ではなく、「消費減税」によって景気を回復させ、税収を増やし、財政再建を進めることを求めている。だが、その考えに賛同しない増税派でも、今回の法案には賛成するのだろうか。増税するにしても、行政コストを減らすという条件をつけて行うのが筋ではないか。
参院選が近づく今だからこそ、党派やイデオロギーを超えて、政府が進める増税路線に反対を唱える必要がある。
(山本慧)
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