【中朝首脳会談】金正恩は「六カ国協議」でトランプ退任まで時間を稼ぐ!?
2018.03.31
(提供:KCNA/UPI/アフロ)
《本記事のポイント》
- 「六カ国協議」に至る流れが、15年前と同じシナリオ
- 北朝鮮は、口約束の「非核化」交渉で、米タカ派政権の交代を待った
- 今回も「対話ムード」「天皇退位」「東京五輪」で、トランプ退任までの時間稼ぎ
トランプ米大統領の経済制裁・軍事圧力に対して、金正恩・朝鮮労働党委員長が"返し技"をくり出した。
他国への事前通告もなく特別列車で電撃訪中し、習近平・中国国家主席と中朝首脳会談を行った。そこで金正恩氏は、核放棄への道筋をめぐる「六カ国協議」に復帰し、「朝鮮半島の非核化実現に尽力する」意思を伝えた。
これでアメリカは、一気に軍事行動に出にくい雰囲気となった。
ただし金正恩氏は、非核化交渉に条件を加えた。「米韓が我々の努力に善意で応えて平和安定の雰囲気をつくり、"段階的で歩調を合わせた措置"をとるなら……」というものだ。
つまり、国際社会が「制裁解除」「経済支援」「体制の保障」などのカードを一枚ずつ切るごとに、北朝鮮も「核の放棄宣言」や「核の凍結」というカードを一つずつ切って応えるという交渉方式を指定してきたのだ。
15年前と同じシナリオが進む!?
まるで、15年前のデジャブを見ているようだ。
2002年、アメリカの共和党・タカ派の大統領であるジョージ・W・ブッシュ氏は、過去の合意を破って核開発を進めてきた北朝鮮を「悪の枢軸」と位置づけた。そして、「核放棄をしなければ、先制攻撃をも辞さない」という姿勢を見せた。
絶体絶命の北朝鮮に、韓国が"救いの手"を差し伸べた。左派政権の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が、「米国が韓国の反対にかかわらず北朝鮮を攻撃した場合、韓米同盟を破棄することになる」と伝え、アメリカは動けなくなった。
そうこうしているうちに、アメリカはイラク戦争に突入する。外交的にも軍事的にも、北朝鮮と正面衝突する事態を何としても避けたい。
そこで、アメリカが助力を求めたのが中国だった。中国を議長国として、ロシア、韓国、日本でもって包囲するように話し合う――。それが、2003年に始まった「六カ国協議」という枠組みだった。
北朝鮮は当初、協力的な姿勢を見せた。2003年には、「北朝鮮がすべての核兵器と核計画を放棄する」ことを約束する共同声明にも合意した。
ただしその共同声明には、条件が書かれていた。「『約束対約束、行動対行動』の原則に従い、前記の意見が一致した事項についてこれらを段階的に実施していく」というもの。つまり、非核化の「段階的」な実施だ。
タカ派の米大統領に、韓国左派政権の横槍、そして、中国を議長国とした「六カ国協議」、そして「段階的」な非核化交渉……。現在の情勢と、あまりに似通っている。
時間稼ぎの末に「ちゃぶ台返し」
では、「六カ国協議」はその後、どうなったのか。
北朝鮮は当初、核計画を放棄し、黒鉛減速炉の冷却塔を爆破するなど、非核化への手順を段階的に踏んでいった。その都度、制裁解除、資源や食料の支援などを引き出していった。
しかしアメリカが、一部の施設に立ち入って検証しようとする段階で、北朝鮮が頑なに拒否した。それ以降、協議は平行線となる。
そうこうしているうちに、アメリカ大統領は民主党のバラク・オバマ氏に代わった。そのとたん、北朝鮮は「六カ国協議」の合意を"ちゃぶ台返し"する。強硬に核・ミサイル開発を進める姿勢を見せ、2009年4月にテポドン発射を行ったのだ。
北朝鮮は、経済支援などを引き出せるだけ引き出しながら、時間を稼いでいただけだった。その時間とは、一つは、裏で核開発をすすめる時間。そしてもう一つが、アメリカのタカ派大統領が任期を終える時間だ。
金正恩守護霊の「本音」とは?
大川隆法・幸福の科学総裁は中朝会談の8日前の18日、金正恩氏の本音を探るため、守護霊の霊言を行っていた。そこではすでに、金正恩氏の算段がまさに「時間稼ぎ」であることが語られていた。
霊言収録は韓国の特使が北朝鮮を訪問し、南北会談が決まった後のこと。米朝会談については報じられる前だったが、守護霊はアメリカと対話する可能性に言及していた。
「(対話は) ああ、してもいいよ。してもいいけどね。(中略)なくすなら、あちらの韓国からも (米軍の) 核兵器をなくし、日本にも持ち込ませない 」
つまり、金正恩氏が言う「朝鮮半島の非核化」とは、周辺からの米軍撤退をも意味する可能性が高い。
また、対話姿勢を見せ始めた真意については、以下のように語っている。
「 今年は、南とのムードをつくって、そのへんのタイミングを外してしまえば、天皇退位と、あとは東京オリンピックで、もう、そういう『タカ派路線は取れなくなる』から。だから、それが"狙い"だね 」
「 四年を過ぎ越せば、次はどうせ、民主党大統領が出てくるだろうからさ、このほうがやりやすいわな、すごくなあ。だから、トランプのときに、狂犬が狂犬病で噛みついてくるのだけは、ちょっとさけなきゃいけないんで。あと二、三年、ちょっと上手に南と対話している姿勢をつくって、何か条件交渉しているうちに、トランプはいなくなるから、そのときはチャンスだねえ 」
ブッシュ政権時と同じく、今回の対話姿勢も最初から「トランプ大統領の任期待ち」のつもりなのだ。
しかし、前回と違うことがある。それは、次に時間を稼がれたら、もう北朝鮮の非核化は半永久的に期待できないということだ。
今、北朝鮮が完成を目指しているのは、もはや核そのものではない。核兵器やその小型化技術は、既に完成しているだろう。
後は、「アメリカに届く大陸間弾道ミサイル(ICBM)が、大気圏に再突入する際の高温高圧に核弾頭が耐えられるか」という、「詰め」の部分が残っているのみだ。ここを超えれば、もう北朝鮮はアメリカ国民を核で人質に取ることができる。
この期に及んで、また「六カ国協議」の罠にはまるのか。国際社会は、冷静な判断を求められている。
(馬場光太郎)
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2018年4月号 編集長コラム 「孫子」で中国に「戦わずして勝つ」――日本の新しい平和主義
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
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