国民皆保険に医師の半数が「持続不能」と回答 改革が求められる日本医療界
2017.07.01
《本記事のポイント》
- 医師の半数が現在の国民皆保険の持続を不可能だと考えている
- 日本の過剰医療が医療費を肥大させている
- 予防医療や価格設定の自由化を始めとし、「患者を卒業させる医療」が必要
日経新聞社などが実施したアンケート調査によると、医師の半数が現在の国民皆保険を「持続不可能」だと考えていることが明らかとなった(30日付日経新聞)。
1030人の医師がアンケートに回答し、「現状の皆保険制度に基づく医療は今後も持続可能と思うか」という質問に対し、52%が「そうは思わない」と回答。25%が「そう思う」、22%が「分からない」と答えている。
持続できないと答えた医師からは、「高齢者の医療費が増大しすぎている」「過剰医療も大きな問題」との声が挙がった。持続可能だとした医師も、「消費増税があれば」「患者負担の増加が必要」という条件を示しており、現状のままでの制度維持は難しいという認識だ。
また、30代や40代などに持続不能と答える医師が多く、若い世代がより強い危機感を抱いているようだ。
患者を病院漬けにする日本の「過剰医療」
誰もが低い自己負担で医療を受けられる国民皆保険は、1961年に導入された。これにより、高度経済成長期以降、日本人の平均寿命は世界最高レベルへと上昇した。しかし、高齢化社会を迎え、生活習慣病なども増えたことから、医療費は増大の一途をたどっている。
1990年度に20兆円を超えた国民医療費は、2015年度に41.5兆円まで倍増。2015年度の税収56.3兆円の約8割分に相当する。
政府の推計では、医療費は2025年度に54兆円に達する見込みで、その後ますます肥大していくと見られる。加えて、2025年には団塊の世代が75歳を迎え、いよいよ日本は「超高齢社会」に突入する。医療制度の改革は急務だ。
医療費の肥大の原因として、日本の「過剰医療」制度が挙げられる。日本の医療は、「出来高払い制度」を採用しており、治療をすればするほど病院側の収入は増える。そのため、必要以上に患者に薬を処方しがちになるなど、過剰医療に陥りやすい。
実際に、日本の平均在院日数、人口当たりの病床数のどちらも諸外国と比較して異常なほど高い。また、国民一人当たりの外来受診回数も群を抜いている。
必要な人に必要な医療を施すことは重要だ。だが、自立できる人までも病院漬けにしてしまうような医療には問題がある。
患者を卒業させる医療へ
個人の医療費負担が少ないため、努力して病気を予防するという「予防医療」の観点が欠けがちであることも指摘される。政府や医療機関、国民が一丸となって予防医療に取り組むことが必要だ。
予防医療の推進に加え、具体的な制度の改革としては、医療サービスの価格を段階的に自由化することを検討すべきだ。病院によって患者へのサービスには差があるはずだが、現在は同じ医療行為に対しての価格は統一されている。
この価格設定を自由化することで、病院間・医療者間の健全な競争環境が整い、患者を回復させる実績のある医者や病院が適切な評価を受けるようになる。さらに、「診断を中心とした安い病院」「高価だが丁寧なサポートをする病院」などサービスが多様化し、患者の選択肢も広がる。
増税ではなく、「患者を卒業させた病院が評価される医療」に変化することが、医療問題を根本的に解決することになるだろう。
(片岡眞有子)
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