2014年7月号記事

病院やクスリが「病人を増やす」

医療の「常識」逆転 前編

医学の進歩に相反して、なぜ患者の数は増え続け、医療費が財政を圧迫するまでに膨れ上がるのか。この矛盾を解明するために、2回にわたって医療のカッコつきの「常識」を検証する。前編では、健康志向の強い風潮のなか、医療界が積極的に検査や薬を勧めて、「病人を増やしている」事実に迫りつつ、現代医学が見落としている心と病気の関係を探る。

(編集部 近藤雅之、馬場光太郎)

現代では、各企業や自治体で毎年のように健康診断が実施されている。無理をして体調を崩す前に、検査で病気を発見できることはありがたい面もあるだろう。その最たるものとして、がん検診による「早期発見・早期治療」が社会に浸透してきた。

しかし、いまだに日本人の3人に1人はがんで亡くなっている。 多額の費用がかかるがん治療は、どの程度効力があるのだろうか。

また、糖尿病が強く疑われる人は、今や全国で800万人以上と言われており、医療費全体の約3分の1を生活習慣病が占めている。厳しい基準値によって「早期発見」が進み、投薬治療を受けているはずだが、 生活習慣病に対して、薬は有効な手段になっているのだろうか。

そこで今回、「がん放置療法」を実践している近藤誠医師と、「薬を使わない薬剤師」として活動する宇多川久美子氏に、医療の「常識」とその問題について話を聞いた。

驚くべき医療の「常識」逆転話(番号は上のイラストと対応)

(1) 1950年から2007年の間、心疾患や脳血管疾患、インフルエンザなどの死亡者は60%以上減少しているが、がん死亡者数は8%しか減少しなかった。(米国疾病予防管理センター調べ)。

(2) 医者ほど、抗がん剤の副作用と、効果の薄さを知っていると言われている。

(3) 絆創膏は傷口を乾燥させ、消毒薬は白血球なども殺してしまうため、治りを遅くする。最近は、浅い傷口は水で洗い、乾燥させないようラップなどを貼るのが主流になりつつある。

(4) 解熱剤で体温を下げると、ウィルスと戦いにくくなる。

(5) 1000人あたり、日本は14床。2位の韓国が8.5、アメリカが3.2床、イギリスが3.6床(OECD調べ)。

(6) 日本の人口は世界の2%程度だが、薬の使用量は20~30%。

(7) 血圧の「正常値」を下げれば「高血圧患者」はいくらでも増やせる。

(8) 余命は過去の統計の平均でしかなく、全員には当てはまらない。受験前の合格判定や、地震の発生確率のようなもの。

(9)「アメリカ栄養研究所」ゲーリー・ヌル博士の調査。

(10) 1973年、イスラエルの医師のストライキ期間中、人々の死亡率は半減。1976年、コロンビアのストライキ中は35%減。1976年、アメリカ・ロサンゼルスのストライキ中は18%減った(ロバート・S.メンデルソン『医者が患者をだますとき』より)。

イラストレーション:山根裕一郎