自動運転――変わるのは車ではなく、社会だ
2017.06.18
《本記事のポイント》
- シリコンバレー企業などは、激甚な「自動運転」の開発競争の中にいる
- 自動運転車が開発されれば、事故や渋滞が減り、生活スタイルが変わる可能性も
- 未来社会につながるアイデアは、身近にもあるはず
アップルの最高経営責任者(CEO)ティム・クック氏は、これまで極秘にしてきた自動運転のプロジェクトについて、ようやく口を開いた。
ブルームバーグのインタビューで、クック氏は、自動運転システムの開発は「非常に重要なコア技術」であり、「全ての人工知能(AI)プロジェクトの母となり、取り組んでいるAIプロジェクトの中で、おそらく最も困難なもの」と語った。
アップルのみならず、ウェイモ(グーグル傘下の会社)やウーバーを筆頭とするシリコンバレー企業や、日本企業のトヨタや日産など大手自動車メーカーも、自動運転車を開発中だ。世界中がしのぎを削っている。
事故や渋滞が減り、経済発展も
では、完全な自動運転車ができた場合、社会はどう変化するのか。
まず、交通事故が劇的に減る。交通事故の原因の約94%は、ヒューマンエラー(運転手の過失)とされている。自動運転が導入されれば、運転手のよそ見や、ペダルの踏み違いによる運転ミスがなくなる。急に人が飛び出してきても、車は自動的に停止できる。
また、渋滞も緩和される。そもそも渋滞の原因は、車の速度低下だ。ある車が、坂道や割り込みなどの理由で速度を落とし、その後ろの車が次々と速度を落としていくため、渋滞する。
だが、自動運転の場合、速度を一定に保ち、車間をつめて走行できる。ある研究によると、路上を走る車の90パーセントが自動運転車になれば、道路の容量が2倍になったのと同じ効果があるという(※)。渋滞時間が減り、物流が効率化されれば、経済の発展にもつながっていく。
さらに、駅付近の駐車場も必要なくなる。駅のすぐそばに駐車しておかなくとも、必要があれば、遠くの駐車場から呼び寄せればよいからだ。路上駐車も減り、駅前のスペースも増え、都市の発展にも利用できるだろう。
このように、自動運転の技術は、私たちの暮らしや社会を大きく変えるだろう。そして、さらに未来を見越して、「空飛ぶ自動車」の開発に取り組む企業も現れている。トヨタグループは5月、社内の若手が中心となって進めてきた「空飛ぶクルマ」プロジェクトに、総額4250万円を出資することを決めている。
(※)ホッド・リプソン、メルバ・カーマン共著『ドライバーレス革命』(日経BP社)
未来社会をつくる"アイデア"で勝負
とはいえ、自動運転技術そのものの研究開発に関しては、資金の乏しい中小企業では、大手企業に勝てないだろう。それならば、"アイデア"や"起業家精神"で勝負しよう。
例えば、"自動運転シェアカー"という新しい交通サービス。これが広まれば、過疎地での高齢者の移動も楽になり、通学・通勤など、生活そのものを変える可能性も高い。
日本交通の川鍋一朗会長は、自動運転技術が普及すれば、広告と結びつき、無料タクシーのサービスが生まれると考えている。個人情報を提供したり、動画広告を閲覧する代わりに、無料で自動運転のタクシーサービスを受けられるという、新たなビジネスが生まれる可能性があると語っている。
まだ多くの人が気づいていない、あっと驚くようなサービスや製品の種は、意外と身近に転がっているかもしれない。
(山本泉)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『未来産業のつくり方』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=67
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