日本にとっても人ごとでないテロ 日本を守る「民警」の可能性

2017.06.01

《本記事のポイント》

  • 民間警備会社は東京オリンピックを機に設立
  • セコムは近年、刑務所の管理にも進出
  • 民間でできる事業の民間委託は進めるべき

英ロンドン・マンチェスターのコンサート会場で、テロ事件が起きて1週間が過ぎた。2020年に東京オリンピックが開催されることを考えれば、日本にとっても対岸の火事ではない。

日本の安心・安全を守るため、大きな役割を期待されているのが、民間・民営の警備員、いわゆる"民警"だ。

テロもなく無事に終わった2012年のロンドンオリンピックでも、警察官1万7000人、軍隊7500人に加え、民間警備員1万6千人が投入されていた。

日本を防衛する自衛隊は23万人、治安維持にあたる警察官は24万人。一方、民警は50万人もの人数を有しており、その最大手はセコムと綜合警備保障(ALSOK)だ。

前回の東京オリンピックから始まった"民警の歴史"

元々、セコム(旧・日本警備保障)は、実質上、1964年東京オリンピックでの代々木選手村の警備からスタートした。同社は1962年に、当時29歳の飯田亮氏と30歳の戸田寿一氏が創立した、日本で初めての警備会社だ。

日本は「水と安全はタダ」という国柄。そのため創業当初は営業に行っても冷たくあしらわれていた。だが、少しずつ実績をつくり、東京オリンピックでの警備という仕事をつかんだ。

この警備で箔がつき、日本を代表する一流ホテル、帝国ホテルでの警備の仕事を得る。さらに1965年、警備員を正義のヒーローとして描いたテレビドラマ「ガードマン」が大ヒット。ドラマは6年9カ月続いた看板番組となり、警備業の認知度と契約数は、うなぎのぼりになった。

東京オリンピック委員会の事務次長だった村井順氏も、オリンピックの翌年、綜合警備保障(ALSOK)を創業した。1年後には社員600人、3年後には2600人、5年後には6400人と増えに増えていった。

だが、1972年に警備業法が制定されて以来、民警は常に規制の対象だった。公警察もあまり歓迎しない存在であり、警察庁長官の後藤田正晴氏は、雨後の竹の子のように生まれる警備会社について、「必要悪といったような考え方で対処しなければならぬと考えておるわけでございます」と発言している。

しかし2003年には、犯罪対策閣僚会議の中で「生活安全産業としての警備業」という言葉が初めて使われた。民警は国民の必要不可欠な存在であり、公警察にとってのパートナーであると認められるようになったのだ。

ALSOKの創業者の息子である村井温会長は、「父が我が社を創業したときに、日本の安全のため、日本の治安維持のため、そういうコンセプトでしたから。儲けるというより使命感があって綜合警備保障をつくったのです」と語っている。

1964年の東京オリンピックを契機として注目された民警が、2020年の東京オリンピックでも、公警察とともに東京を守る。創業者が抱いた志が、現実のものとなりつつある。

民間でできるものは、民間でやる

民警の活動範囲は、警備業務にとどまらない。

例えば、刑務所の運営にも携わっている。山口県にある美祢社会復帰促進センターは、薬物犯罪や詐欺など比較的重くない罪で、かつ初犯の受刑者が収容される刑務所だ。法務省の職員160人に加え、民間の職員200人、さらにパート職員が働く。

公務員と民間職員とでは権限や責任が完全に分かれている。民間が監視や巡回警備を担当するため、公務員にしかできない仕事に専念できるというわけだ。民間のノウハウを活用したこの刑務所は、公的機関が運営するより大幅なコスト減になったという。

これまで防災事業は利益が得づらいということもあり、その多くが国や地方自治体の公共事業として行ってきた。将来的には、民警が防災事業を行う可能性もある。陸だけの警備にとどまらず、"海上警備型のセコム"や"海上警備型のALSOK"が、民間人を警備するために海に出ることもあり得るだろう。

「小さな政府」を目指す上でも、現在は公的事業となっているもののうち、民間でできることは民間でやっていくことが望ましい。

(山本泉)

(参考書籍:猪瀬直樹著『民警』)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『世界を導く日本の正義』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1662

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タグ: 警察  オリンピック  小さな政府  警備会社  民警  ALSOK  対策  セコム  テロ  犯罪 

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