いじめが原因の不登校容認へ 欠席時の教育の質アップも必要
2017.04.07
《本記事のポイント》
- 文科省が、いじめを理由とする欠席を容認する方針
- 学校の生徒への対応、学校外の教育の質も問題
- 公教育における人間教育について信頼回復が必要
文部科学省はこのほど、不登校の子供たちが学校外でも学べる機会を確保するという基本方針を公表した。不登校の小中学生が、いじめが原因で欠席することを容認し、フリースクールなどの学校外で勉強していても登校という扱いを受けられるというものだ。近く、各都道府県知事や全国の教育委員会に通知される。
今までは、不登校の解決を「登校すること」としていた。今回の方針では、登校という結果のみを目的とせず、学校を休むことを認め、児童・生徒の社会的自立を目的として、フリースクールとの連携を進める。また、学校や保護者、フリースクールなどでの情報を共有するため、不登校の理由などを記入する「児童生徒理解・教育シート」を取り入れ、教育委員会とフリースクールが支援策を議論できる会合も設置するという。
文科省の調査によれば、病欠などの理由以外で長期間欠席した小中学生は、2013年から3年連続で増加している(4日付読売新聞)。
今回の方針の前提には、不登校であっても勉強する機会を提供する必要性から、昨年12月に「教育機会確保法」(注1)が成立した。この「教育機会確保法」では、「義務教育を休んで良い」ということと、「学校以外の場の重要さ」が認められたことがポイントとなる。
年々、不登校の小中学生が増える中、学生時代の不登校をきっかけにその後の教育が受けられず、社会的自立が難しくなるケースもある。また、いじめによる自殺も相次いでいる。抜本的な解決ではないにせよ、必要な措置であることは確かだろう。
(注1)正しくは「義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律案」。
フリースクールといっても教育の質は様々
しかし、問題点もある。
「いじめから子供を守ろう!ネットワーク」井澤一明代表に、この基本方針が実施された場合の懸念事項を聞いた。
「まず、学校側がいじめの事実を認めるかどうかが問題です。いじめが原因だと認められなければ単なる欠席扱いになってしまうからです。反対に、実際は別の理由で不登校であるにもかかわらず、『これはいじめだから仕方ない』というように、学校側の保身に利用されてしまう可能性もあります。
また、文科省のアンケート(注2)によると、現在、小中学生で『いじめにあったことがある』と答えた生徒は全体の9割です。運用を間違えると、『学校にいかなくてもいいんだ』ということになる危険性もあるのではないでしょうか」
また、欠席している間の教育の質にも問題があるという。
「フリースクールの活動内容は、主に人間関係の構築や、精神面での援助が中心です。勉強を教えているところは少なく、一日中トランプをしていたりするようなところもあります。そのため、『教育の機会』ということになると、フリースクールの質が問題となってきます。
むしろ、勉強をしっかり指導してくれるという意味では、渡部昇一氏が言うように、学習塾を学校として認めたほうがいいでしょう。
公教育の場では今、『教育』に対する信頼の回復が必要です。先生たちが教育を『ワーク』『仕事』として、ただこなしていることが多いのです。人間教育や人格教育、そして先生たちの、教育に対する情熱が失われているように感じます。これが根本的な問題ではないでしょうか」
(注2)文科省 国立教育政策研究所2013「いじめ追跡調査2010-2012」。
「いじめによる不登校」の根本解決は善悪の価値基準を教えること
こうしてみても、「教育機会確保法」はあくまで、現状に対処するための補助的な対策だといえるだろう。根本的にいじめ問題を解決するためには、学校において「何が正しく、何が間違っているのか」という価値基準を教える教育が必要だ。
(HS政経塾 坂本麻貴)
【関連書籍】
幸福の科学出版 『生命の法』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=127
幸福の科学出版 『教育の法』 大川隆法著
https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=49
【関連記事】
2016年12月2日付本欄 幸福実現党が神奈川県議会議長に「いじめ防止策強化」を要請
http://the-liberty.com/article.php?item_id=12283
2015年9月号 不登校はこうすれば解決できる - 再登校率96%以上の支援スクールが実践する「新常識」
http://the-liberty.com/article.php?item_id=9934
2015年7月号 再登校率96% 不登校児支援スクール 「ネバー・マインド」メソッドがついに公開!
「自由・民主・信仰」のために活躍する世界の識者への取材や、YouTube番組「未来編集」の配信を通じ、「自由の創設」のための報道を行っていきたいと考えています。
「ザ・リバティWeb」協賛金のご案内
YouTubeチャンネル「未来編集」最新動画