人工知能の性能が上がっても、人間の価値は変わらない
2016.09.13
「人工知能(artificial intelligence、AI)」に関するニュースをよく目にするようになった。
例えば、NECが開発した人工知能は、人間の代わりに入社試験の書類選考を行なう。これを、人材派遣会社をはじめとする3社が導入するという。
また、人工知能の能力の範囲は、答えが決まっている計算だけでなく、「感性」の分野である文学にも及んでいる。過去の文学作品を学習して新たに小説を書く人工知能や、音楽のパターンを組み合わせて作曲する人工知能も登場している。
人工知能は、学習、推論、判断などといった人間の知能を、コンピューターで再現しようとする技術のことだ。自ら学習する機能があり、蓄積されたデータを組み合わせて新しいものをつくることも、一部ではできる。
「膨大な情報を高速で処理することができる」という面では、人間は人工知能にかなわない。この事実だけを見ると、人間は人工知能に劣るようにも見える。
人工知能vs.人間!?
しかし、人工知能が決して持てないものがある。それは、人間の「心」だ。
人工知能が「心の動き」を真似して再現することはできるかもしれない。しかし、「心」そのものを持つことは不可能だ。人工知能の情報処理はすべて「計算」で行われるが、人間の心は「計算」して答えを出しているわけではない。
人間の「心」こそが、感情を生み、意志を生み、行動を生んでいく。心が出発点となって、人間は未来をつくっている。そもそも心に未来を描いたり、意志を持つことができない人工知能が、人間を超えることはない。
むしろ危惧されるのは、人間自身が「心の価値」を見失ってしまうことだ。そうなれば、例えば冒頭で紹介した入社試験で、数値化できるようなデータのみで人物を判定することをよしとしてしまい、入社してからの人事評価も同様にAIで判定するようになるかもしれない。それではまるで、人間がAIに支配されているかのようだ。
人間の価値を自ら貶めて人工知能に支配されるか、それとも人間の価値を自覚し、高めながら、人工知能を活用できるか。それは人間自身にかかっている。人工知能の研究の進展とともに、「人間の価値」について、もう一度考えるべきではないだろうか。(手)
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